出版社内容情報
「ひとり立ち続ける大観音の寂しさと慈しみ。声にならない声が、今、語られる」――芥川賞作家・松永K三蔵。
ユーモアと愛情にあふれる、著者初の新聞連載小説。
内容説明
東北の大きな街の市役所の新入職員・高村修司。彼のいる出張所の近くには、白くて異様に巨大な大観音が立っている。あの大震災をきっかけに、近隣住民のなかに「大観音が傾いた」という者たちが現れ、その足元を押しはじめて数年が経っていた。大観音は傾いているのか、いないのか。修司はさまざまな人に出会い、ときに翻弄されながら、対応策を求めて奔走する―。
著者等紹介
山野辺太郎[ヤマノベタロウ]
1975年、福島県生まれ。宮城県育ち。東京大学文学部独文科卒業、同大学大学院修士課程修了。2018年「いつか深い穴に落ちるまで」で第55回文藝賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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starbro
141
表紙写真に魅かれて読みました。山野辺 太郎、初読です。実在する仙台大観音 https://daikannon.com/ に関するユーモア・ファンタジー小説、その不思議な世界に思わず引き込まれます。私の次男は、昨年末にピサの斜塔に行きました(笑) https://www.chuko.co.jp/tanko/2024/12/005860.html2025/01/06
梶
27
失われて回帰しないものたちへの祈りを、非当事者としてのストイシズムが厳格に貫く。主人公の修二と大観音をつなぐ幽けき絆は、喪失をもたらした災禍に対する非当事者性だ。大観音の祈りは、修二たちの現実に「傾き」として表出してくる。宗教的であろうとなかろうと、ひとは祈るとき前傾する。「こうあってほしかった」、けれどもどうにもならない現実に、祈ることで支えられる者たちの物語が、素直で穏やかな語りによって紡がれていた。2025/04/26
kieth文
26
牛久大仏は訪ねた事がある。かなり大きな印象だったが、この仙台大観音はその次に大きいとのことだ。 大観音の事業が進められたバブル期、そして2011年3月11日の震災、そして今、、、時の移ろいと共にさまざまな変化がそれぞれの人生を翻弄していた。限りある命について達観して捉えることがどういう事なのか、考えさせられる。"波のしたの都が、豊かで暮らしやすい場所でありますように、と。"p.132 時折語られる大観音様の東北訛りの呟きがいい。主人公高村修司の夢という設定だけれどそこから大観音が私達に迫ってくる。2024/12/27
おかむら
24
仙台市の北の方に建ってる無駄にデカい謎の巨大観音像。あの日から傾きだしてるんじゃないか…?市役所の防災担当新人君が主人公の大観音ゆるファンタジー。著者の山野辺さんはデビュー作(文藝新人賞)もたしかブラジルまで穴を掘る計画担当の建設会社の社員よ話だったような? 主人公の真面目さと周りのすっとぼけた人々のやりとりがいい具合の心地よさ。基本地味目で好きだわー。地元の新聞「河北新報」日曜版連載。2025/05/17
やまさん
19
東北の大きな街の市役所の侵入職員・高村修司。(仙台市かな?)彼のいる出張所の近くの「巨大な大観音が傾いている」と近隣住民が言い出し・・・あの東日本大震災での津波被害を見ているしか出来なかった大観音視点での描写もあり重いものもありました。二日間で読み終えましたが読み終えたのは1月17日。私のような関西人には忘れることのできない日付でした。2025/01/17
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