出版社内容情報
他殺説を封じる強い意思──。「戦後史最大のミステリー」と称され、今なお語り継がれる下山事件。自殺か他殺か謀殺か、さまざまな憶測と情報が飛び交う中、警視庁捜査一課が主導する捜査本部は事件後まもなく「自殺ありき」で結論づけていた。他殺説が封印された構図とはいかなるものだったか。捜査に従事した東京地検の検事による手記、事件の鍵を握る“元憲兵”が出入りしていた「小菅の町工場」をめぐる証言など、約20年にわたって取材を続けてきた新聞記者が発掘した新事実に基づき、事件の糸口を探る。保阪正康氏推薦。
内容説明
他殺説はなぜ封じられたのか。75年を経て明かされた検事の手記、事件の鍵を握る“元憲兵”が出入りしていた「小菅の町工場」をめぐる証言―。
目次
プロローグ 小菅の町工場
第1章 初代国鉄総裁の失踪
第2章 発見された「ガリ版資料」
第3章 「下山白書」の欠落
第4章 元検事の「捜査秘史」
第5章 元旋盤工による新証言
第6章 謎の元憲兵、宮崎清隆
第7章 「他殺説」封印の構図
著者等紹介
木田滋夫[キダシゲオ]
読売新聞記者。1971年神奈川県藤沢市生まれ。大学卒業後、情報業界を経て、99年に読売新聞社入社。横浜支局(神奈川県庁担当)、東京本社社会部(環境省担当)、中部支社社会部(愛知県警担当)、千葉支局デスクなどを経て2019年より東京本社教育部。23年に同部次長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
134
76年前に起きた下山事件に今さら新しい話が見つかると思えなかったが、本書では新たに3点の事実を指摘している。下山総裁が吉田首相らと会見した事実が抹消されており、失踪後に休んだとされる末広旅館の女将が警察や事件関与が噂された亜細亜産業関係者と親密な関係にあり、後者に人脈のある元憲兵が現場近くの鉄工所に出入りしていた。しかもこの鉄工所には、亜細亜産業が入居するビルに隠匿されていたと推測されるプラチナが問題の元憲兵から渡っていたという。時代の要求に屈して封印されていた記憶の発掘が、他殺説をまた一歩補強している。2025/01/08
遊々亭おさる
20
GHQの支配下にある日本。国鉄では大規模な人員整理を断行中であり、国鉄総裁の下山定則は10万人の首を切るために奔走していた。そんな最中、通勤途中で謎の行動を取った末に失踪してしまう。次に彼は線路上で轢死体という形で姿を現す。これは自殺なのか、それとも他殺なのか。新たに発見された資料や証言を元に、他殺の根拠と黒幕の正体に迫る一冊。成る程、本書で自殺とする根拠を突き崩したようにも思えるが、自殺をする人の中には突発的に死を選ぶ人もいるわけで、帯に短し襷に長し。ただ、調べつくされた事件に新たな資料が見つかる驚き。2025/01/07
hitotak
8
「読売新聞オンライン」の連載記事を加筆・再構成した一冊。20年以上下山事件を取材していた著者の執念と偶然の連鎖から、新たな証言を得る。総裁の殺害場所となったある工場と、そこが使われたいきさつについて、傍証と共に著者の仮説が書かれており、非常に説得力のある内容だった。事件の首謀者は共産党ではなく、権力側の謀略であると考えざるを得ない。当時の首相である吉田茂は、下山の葬儀に悲痛な弔辞を書いたが、同時期に読売新聞の記者には下山の死を茶化すような手紙を送っていた。吉田には下山の死も驚くべきことではなかったようだ。2025/03/30
TI
8
ここに来てもさらなる新事実が現れるとは。 特に事件現場のそばにあった鉄工所の関係者の証言はかなり重要では。この事件二興味があれば読んでも損はないと思う。2024/12/03
チェアー
6
新事実はそれほど多くないが、町工場の荒井工業にたどり着いたのが大きな収穫だった。 ただ一方で、国鉄総裁が事件当時、かなり不審な行動をとっていたこともわかった。 他殺か自殺かを決定づけるものはなかなか見つからない。 大きな謎が解かれる時を見てみたいものだ。 2024/11/22
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