出版社内容情報
時代に先駆けてピル解禁を訴えていた女は――突然、姿を消した。謎多き女をめぐる証言から、世の“理不尽”を抉りだす圧巻の傑作長篇。
内容説明
一九九九年に日本でピルが承認される約三十年前に、ピル解禁と中絶の自由を訴える一人の女がいた。派手なパフォーマンスで一躍脚光を浴びるも、その激しいやり口から「はしたない」「ただのお騒がせ女」などと奇異の目で見られ、やがて世間から忘れ去られてしまう―。謎多き女をめぐる証言から、世の“理不尽”を抉りだす圧巻の傑作長篇!
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、10年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、11年同作で読売文学賞、23年『燕は戻ってこない』で毎日芸術賞及び吉川英治文学賞を受賞。15年、紫綬褒章を受章。21年早稲田大学坪内逍遙大賞、24年日本芸術院賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
396
わかる人にはモデルは自明である。もちろん、桐野夏生はそのことを重々承知の上で、それでもあえてフィクションの体裁をとっている。かつて1970年代に活動した「中ピ連」(本書では「ピ解同」)の代表であった榎美沙子(塙玲衣子)を16人の証言から描き出そうとする試みである。桐野の狙いが何であったのかはわからないが、少なくてもあの時期に榎(塙)がなそうとしたことの意味を今、この時点で問い直そうとするものではあっただろう。榎は毀誉褒貶が激しいが(そのほとんどは貶し、戯画化して貶めるものであった)堕天使となった彼女を⇒2025/04/08
starbro
282
桐野 夏生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 (ピンク)オパールの炎の如く、女性解放運動を指導した女性活動家の生涯、読み応えはありましたが、中編ではなく、長編で読みたかった。 https://www.chuko.co.jp/tanko/2024/06/005788.html2024/07/09
fwhd8325
194
活動の詳細はあまり知りませんでしたが、榎美沙子さんの名前は記憶にあります。70年代では、あまりに早すぎたのかもしれません。50年の時を経て、何故と思う面もありますが、時代が見事にシンクロしているように思います。突然消えた、ミステリアスな一面もドラマチックですが、モデルとなった榎さんの存在が知れない現実を考えるとここまで創作したことはすごいことなんだと思います。2024/08/22
のぶ
175
その昔、世間を騒がせた中ピ連の榎美沙子をモデルにした話ですね。作中では塙玲衣子として扱われていますが、そんな一女性の生きざまを、彼女を知るという周辺の人物の証言や記録だけで、構築して人物像を浮き上がらせようという構成です。ただ証言には同じような内容のものが多くて、読んでいてちょっと飽きてくる。またこれらの記述で、深い人物造詣が構築されたかというと、それには疑問が残る。自分は当時の事を知っているので、興味本位で楽しめたが、知らない世代にお薦めするかというと、否定的になると思う。今、なぜ榎美沙子なのか?2024/06/24
まちゃ
157
1970年代に「ピル解禁同盟」(ピル解禁を要求し、中絶禁止法に反対する女性開放同盟)を結成し、一世を風靡した活動家・塙玲衣子。一人の女性ライターが、塙玲衣子を知る人々へのインタビューを通じて、彼女の闘いの足跡を明らかにしていく物語。様々な人々へのインタビューから、塙玲衣子という人間を理解しようとする展開は、一見イヤミス風。桐野さんの問題意識は、「少子化対策」を安易な「産めよ殖やせよ」という言葉で女性だけに押し付けるな、ということかもしれません。表紙は意味深2024/10/12