出版社内容情報
いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来“普通の生活”をしたことがない。そんな男女2人がひとつ屋根の下で暮らし始めたから、周囲の人たちは当然付き合っていると思うが……。不器用な大人たちの“ままならなさ”を救う、ちいさな勇気と希望の物語。
内容説明
「ここで、一緒に暮らしつづけよう」いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来“普通の生活”をしたことがない。そんな男女2人がひとつ屋根の下で暮らし始めたから、周囲の人たちは当然付き合っていると思うが…。不器用な大人たちの“ままならなさ”を救う、ちいさな勇気と希望の物語。
著者等紹介
畑野智美[ハタノトモミ]
1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。2013年に『海の見える街』で、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のぶ
201
こころ暖かで良い話だった。主人公はふたり。いとや手芸用品店を営む木綿子は、35歳になった今も恋人がいたことがない。片や台風の日に従業員募集の張り紙を見て、住み込みで働くことになった28歳の光は、母親が家を出て以来“普通の生活”をしたことがない。そんなふたりがひとつ屋根の下で暮らし始めた。本作が恋愛の話かどうかはいろいろな意見があると思うけれど、人と同じになれない自分を抱えて、誰かの優しさにおびえて、それでも光を求めてうずくまっている1人きりの寂しい夜を包み込む。ふたりの幸せを願わずにいられない一冊。2023/09/18
Karl Heintz Schneider
186
職を失い、住居も取り壊しが決まり途方に暮れた夜野光が辿り着いたのが、いとや手芸用品店。住み込みで働かせてもらうことになり以前勤めていた洋食店での経験を活かし店主・糸谷木綿子の食事の支度もするように。子どもの頃にネグレクトを受けていた28歳の光。恋愛感情を持つことができない35歳の木綿子。人との距離感がうまくつかめないふたりは徐々に心を通わせるように。でもそれは決して恋愛感情ではなくて、恋人でも、家族でも、友達でもなくて、雇用主と従業員と言う関係ともちょっと違っていて、同志もしくは戦友と呼べるかもしれない。2023/11/14
いつでも母さん
185
「でも、言葉で説明できるようになんて、ならなくてもいいんだと思います」ラスト近くに光に言わせてる。畑野さんの作品は心の奥深くに響く。時に残酷に時に慈悲を持って、そして今回のように優しく届く。喉が詰まって言いたいことが思うように伝わらない経験はないだろうか?大人だからってみんな器用な訳じゃない。みんな同じ感じ方でもない。そこの塩梅が実に巧いのだ。寂しさの中の温もり。木綿子と光だけの空気感が好きだ。2023/09/30
kotetsupatapata
184
星★★★☆☆ 令和の人間関係を象徴するような穏やかなストーリー。恋愛をしたことのない木綿子と、家族の温もりを知らない光の二人は、よくある「友達以上恋人未満」よりかは、家族というか同士のような関係に見えました。 互いに踏み込みたくても踏み出せないもどかしさは、正しくハリネズミのジレンマと呼ぶに相応しく、読んでいるこちらも二人の背中を押したくなるやり取りでした。 世間の好奇の目に負けずに二人の選んだ幸せを信じて、共に歩んでもらいたいものです。2024/01/03
hiace9000
162
読み始めしばらくでわかる書名『ヨルノヒカリ』の意外な意味。だが読後の余韻と共にふわりと浮かび上がるのは、書名が醸す得も言われぬ暖かみや、切なく煌めく希望を思わせる含意ー。嵐の夜、「いとや手芸用品店」の店先に漏れた光が主人公・光にとって救いのヒカリとなったように、光の存在もまた木綿子にとってかけがえのない希望や安心をもたらす労りのヒカリとなっていく。「多様性の理解」を少し掘り下げて作品に織り込むことで、単なる恋愛小説とは異なる味わいと"これから"を見せてくれる。登場人物たちの優しさの芯にある強さが心地よい。2024/03/23