出版社内容情報
明治三三(1900)年5月、清国公使館付の駐在武官として北京に赴任した柴五郎陸軍中佐は、いきなり危機に見舞われた。折しも清国では攘夷運動が激化し、のちに義和団の乱と呼ばれる状況であった。紫禁城近くの外国公使館が集まる在外地区「東公民巷」周辺でも不穏な動きが起きていた。ドイツ公使殺害事件や日本人にも犠牲者が出るに及び、日本をはじめとする公使館は団結して、救援が来るまでの籠城戦を決意する。しかし、各国の寄せ集め軍隊の上に、日本本国からは「各国と足並みを揃えよ、出過ぎたまねをするな」という指示……。ここに柴中佐たちの、50日以上に及ぶ戦いが始まった!!
内容説明
120年前、誕生して間もない日本を襲った未曾有の危機。それは、現代でも起こりえる明日の物語。明治33(1900)年5月。柴五郎陸軍中佐は、公使館付駐在武官として北京に赴任した。おりしも清国では、後に「義和団の乱」と呼ばれる攘夷運動が激化。北京市内の外国公使館地区でも皆、警戒を強めていた。しかし自国民保護を目的に列強各国が武力介入に踏み切ると、清の権力者・西太后はこれに抗すべく宣戦を布告して公使館地区へ攻撃を開始。日本を含む各公使館の人々は救援到着まで団結しての籠城を決意するが、500人足らずの寄せ集めの籠城連合軍に対し、敵は数万…。はたして、津波の如き勢いで迫る敵軍を防ぐことは可能なのか?そして、救援が来るその日まで生き延びることはできるのだろうか?ここに55日に及ぶ、地獄の籠城戦が始まった!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サケ太
23
なんとも凄絶な物語か。義和団の乱の始まりから、遂には長きに渡る籠城戦を他国の人間らと共に戦い続けた柴五郎中佐を中心に描かれる。五十日以上もの戦い。腹に一物も二物もある各国の人間が互いに歩み寄れるはずもない。そんな中で、懸命に役目を果たそうとする日本の軍人。協力し始める他の国家。清国内部のごたごた、援軍でも足並み揃わぬ状態で、混迷を極める。互いに協調出来ないはずのものたちの、歴史的な奇跡に思える。『生き残った戦友、生き残れなかった戦友、彼らとともに戦い抜いた日々は一生の語りぐさだ。』一読の価値がある。2020/04/01
泰然
21
見事。列強11ヶ国の北京公使館が清国の軍勢に包囲された史上最悪の籠城戦。祖国・会津を滅ぼした新しい祖国日本の旗の下、陸軍中佐・紫五郎の痛々しい過去と、前代未聞の「多国籍戦」。この両方をクロスして描き、開明期の日本人の垢抜けなさと、諸外国の交差する思惑をそこへ通して本書のタイトルが象徴するものを描く。足並みの揃わない連合軍の窮地でも凜然とする紫中佐の立ち振る舞いと、シベリア単騎横断で有名な福島少将の救援に向かう胆力は正に時代小説の醍醐味。サムライ精神と近代日本人のアイデンティティが交差する瞬間を捉えている。2020/07/03
0717
14
義和団事件と55日間に渡る北京籠城戦と柴五郎中佐の活躍。初読みの著者ですが、事件がコンパクトに纏まっていて、面白かったです。さくっと義和団事件が分かります。柴中佐の部下の守田利遠大尉は福岡市鳥飼の出身なんですね。ご近所さんで親近感がわきました。2021/08/21
オーウェン
8
義和団の乱と呼ばれる1900年に起きた攘夷運動。 在外地区に住む外国公使館も例外なく戦火に巻き込まれ、日本やアメリカなどが団結して救援が来るまで籠城作戦を立てることに。 説明過多だが、堅苦しい感じはなく、一旦籠城が始まるといかにして耐えるのか。 また死者が増えていくたびに、知恵を働かせて新たな局面を乗り越えていく。 基本的にストレートな進み方だが、この時代の知識がある程度ないと読み辛い可能性がある。 人物表や街中の図などがあって非常に助かった。2020/09/19
Matsuko
5
権益を巡り列強がひしめく清朝末期の北京で起きた義和団事件。互いの立場もあり一致団結してとはとても言えないが、なんとか協力して籠城する八ヶ国連合軍。会議で垣間見える各国の思惑。早く籠城組を助けたい先発軍と見栄のために仲間を見殺しにしかねない本国。限られた情報の中、援軍がいつ到着するのかとじりじりしながら読んだ。籠城戦の主役で獅子奮迅の働きを見せる柴中佐が、故郷の会津を滅ぼした日本に複雑な想いを抱き、一歩距離を置いているのも印象的だった。日本人、英国人と括った時、個人が見えにくくなってしまう。読んでよかった。2022/01/05