出版社内容情報
あるとき、男は政府軍の猛攻を逃れ、ある洞窟に辿り着いた。そこで男は、自らにのみ語りかける<声>の存在に気づく。
その<声>は、かつてこの国の支配者階級だった武士の千年近くに亘る壮大な戦いの歴史を物語りはじめる――。
本年度歴史小説最大の話題作、ここに誕生！ 『小説ＢＯＣ』「螺旋プロジェクト」中世・近世篇
内容説明
源頼朝、足利尊氏、明智光秀、大塩平八郎、土方歳三…命を懸けた果てなき争いの先に待ち受けていた光景とは？千年近くの永きに亘り、この国を支配し続けてきた武士。しかしてその真の主役とは、勝者・敗者問わず、あらゆる猛き者をなぎ倒し、咆哮する魂を飲み込んでひたすらに驀進し続けた“歴史”そのものであった。いま、若き勢いそのままに練達の境地へと飛躍する著者が、その血塗られた戦いの系譜を、一巻の書物の中に極限まで描き切った。本書は、一篇の娯楽的歴史小説を、この国の叙事詩へ昇華させることに成功した、圧巻の物語である。さあ、覚悟して本書を繙かれよ。そして、その歴史の“声”に耳を傾けよ―。
著者等紹介
天野純希［アマノスミキ］
１９７９年生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知大学文学部史学科卒業後、２００７年に「桃山ビート・トライブ」で第２０回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。２０１３年『破天の剣』で第１９回中山義秀文学賞を受賞（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
260
中央公論新社創業130周年記念「螺旋」プロジェクト第四弾、天野 純希、初読です。 http://www.chuko.co.jp/boc/spiral.html 「螺旋」プロジェクト完読倶楽部継続中です。 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11423997?sort=book_count&order=desc 1000年弱の武士（もののふ）のクロニクルを400頁強に収めるのは無理があり、現状マイワーストです。続いて澤田 瞳子の「月人壮士」 へ。2019/06/19
ウッディ
162
平将門の乱に始まり、数々の争いを繰り返し、西郷隆盛の西南戦争で幕を閉じた武士（もののふ）の世の根底には、山族と海族の諍いがあった。平安時代から明治時代までの壮大な物語だったが、一つ一つのエピソードが薄っぺらい印象でした。本能寺の変は、織田信長の天下統一後の朝鮮侵出の野望を知り、平和な世を望んだ明智光秀の正義の戦いだったと言う新解釈で、野心のない徳川家康が描かれていたりと、それなら山族と海族は関係ないのでは、螺旋プロジェクトが裏目に出たと言う感想です。とにかく長くて、疲れてしまった。残念！2019/11/02
nobby
154
「人は、争いなくして生きてゆくことはできぬ。」この言葉を顕著に表す存在としての武士(もののふ)による長き時代を語り尽くす力作。それ故に、平将門から源平合戦、南北朝から戦国・江戸そして幕末と駆け巡る様はかなり忙しい…個人的には元々好きで惹かれる史実を懐かしく追いかけて満足♪学生時分に覚えた事実と、後日聞き知った伝承などの整理に繋がったのもよかった。“螺旋”なる山族と海族の対立に重ねられる展開が随所でみられるのにはニヤリ。ただ、そこに主題はあまり感じられず、あくまでこの国が辿ってきた歩みを物憂げに読むばかり…2019/09/29
のぶ
152
天野さんの本は初めて読んだが、大変面白かった。時代小説としてはとても良く書けているように思う。ただ、螺旋プロジェクトの中で担当の時代が、平安の終わりの平将門の乱から始まり、終わりは明治初期の戊辰戦争。実に千年近くの物語になっているので、本書での描写は時代の変わり目の部分に限られ、それ以外は中抜けになっていたのは残念。もうちょっと時代を分けて分冊してでも、じっくり読みたかった。これは作品への批判でなく希望なので、娯楽小説としてはお勧めです。プロジェクトのこの先も楽しみになった。2019/05/26
ﾓﾙｸ
137
お互いに相いれない海族山族を描く螺旋プロジェクト作品。今回は平将門に始まり西郷隆盛まで千年に及ぶ歴史物語を海族と山族の対立としての面からとらえる。一つ一つはとても短く簡潔であるが鎌倉そして南北朝の頃が生き生きと描かれていた。ただ山族の徳川家の秀忠と海族の織田の血をひくお江の間には子供ができなかったって本当？そして幕末が苦手な私は残念ながら最後は飛ばし読み。でも螺旋プロジェクトによって天野さんに出会えた。他の作品はどんなものか読んでみたい。2019/08/27
