出版社内容情報
阪急、東宝、宝塚……。近代日本における商売の礎を作った男。哲学と業績のすべて。博覧強記の著者による、圧巻の評伝。
鹿島茂[カシマシゲル]
著・文・その他
目次
なぜ今、小林一三なのか?
第1部 青雲立志(実業家なんてなりたくなかった?;銀行員時代1―仕事より舞妓の日々;銀行員時代2―耐えがたき憂鬱の時代 ほか)
第2部 全国進出(東京篇1―心ならずも東京進出;東京篇2―電力事業に着手する;劇場篇3―宝塚少女歌劇団、大ブレイクの時 ほか)
第3部 戦中・戦後(戦中篇―筋金入りの自由主義者、戦時下を生きる;戦後篇1―自由経済を求め、二度目の大臣就任へ;戦後篇2―東宝、分裂の危機 ほか)
著者等紹介
鹿島茂[カシマシゲル]
1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、明治大学国際日本学部教授。専門は、十九世紀フランスの社会生活と文学。91年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設している。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
23
著者が強調する小林一三の特質は2点。住環境と人口統計学の観点から戦略を立てる経営者であったこと、庶民の文化成熟度を重視する民主的文化主義者であったこと。人間を「数」と同時に「人」として見るバランスにおいて、参照すべき人物といえるのだろう。阪急百貨店や宝塚、東宝の経営に関しても、洗練された商品を多く販売することで安価を実現し、庶民の生活向上につなげるという思考を貫徹させる。面白いのは、宝塚が生んだ女性言語が谷崎を魅了し、その言語文化が神戸出身の村上春樹まで反映しているという論。こうした「余談」が魅力的。2022/02/07
yyrn
22
東京での銀行勤めを34歳で辞め、大阪で電車事業に関わったことを契機に沿線の開発、劇団、デパート、映画、野球団、電力など、次々と新たな事業を手掛けた小林一三(1873~1957)。その経営手腕を学びたくて手に取ったが、どちらかというと日本近代史を踏まえた経営者マインドを教えられた本だった。「清く・正しく・美しく」をモットーとする「宝塚&阪急文化」や、戦時下においても自由経済主義を信奉し、大戦直前に就任した商工大臣として統制経済を強める官吏や軍人たちと激しくやりあったことなどが綴られている。勉強になった。2019/07/23
すしな
19
143−21.海外から来た人たちがコンビニの食べ物を食べて驚くくらい日本は庶民が手頃な価格でクオリティの高いサービスを得られるますし、倫理観も高いとも言われますが、元々の素質だけでなくやはりこういう人の仕掛けがあって培われたものもたぶんにあるのでしょうね。もし阪急や宝塚がなかったりしたら、今はもっと都心と郊外の格差が広がっていたでしょうし、清く正しく美しく生きようと思う人も少なかったように思いました。2021/12/19
りんだりん
16
研修の課題書籍。阪急電車、宝塚歌劇団などを創設した経営者小林一三の物語。人口学に基づき、市民の願望に目を向けて数々の事業を成功させてきた著者の考え方やビジネスの進め方は、当時の人口が爆発的に増えている時代に適したものだった。現在はそれとは逆に人口減少時代。小林一三がとった人口増加時代のやり方から対偶的に学ぶべきものがある。★22021/09/26
templecity
15
三井銀行時代は余り出世にも恵まれなかった小林だが、見合いで結婚したが愛人を捨てきれず二度結婚しているが、結果的に良い家庭を築けている。鉄道発展の考えは都市部における人口増の傾向を読み取り、郊外の環境の良いところに住宅地を設ければ、不動産と鉄道運賃収入の両方を見込めるとの先遣の銘であった。宝塚歌劇団を作ったのは有名な話。百貨店を作ったが東京の三越などが高い値段で送迎をつけて客を呼び込んだが、ターミナル駅に作ったので多売薄利の考え方とした。(続きあり)2019/09/04