出版社内容情報
古来人類は一角獣に寄り添い、時に翻弄されてきた。求め、傷つけあいながら虚構と現実のあわいに生きるものたちを、情緒豊かに描く。
内容説明
人と交わるのが苦手な紺子と不器用な伯父、階下に越してきた恋人たちと暗い目の蜂飼い…。蜜蜂、向日葵、金盞花、温かな雨、月夜に響く笛の音。そして、古来人類とともにある、気高く美しく恐ろしいもの…一角獣。それぞれに「秘密」を抱える儚い生き物たちの、やさしく、つよく、すこしさみしい、さようならの予感に満ちた物語。期待の新人、デビュー第二作。
著者等紹介
小島水青[コジマミズオ]
1970年埼玉県生まれ。東京デザイナー学院編集デザイン科卒業。2011年、「鳥のうた、魚のうた」で、第3回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞。12年、受賞作を収録した短篇集『鳥のうた、魚のうた』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
リッツ
24
今回も不思議なお話だった。ユニコーンを『うにこおる』と表示するところに文中にも書かれた一角獣の暗い言い伝えを想う。翻弄される謎が解けるよりも先に主人公のつぶやきが胸にさびしさをつのらせる。遠い昔の母親の記憶やまとうものの肌触り空気に溶け込んだ匂いなど五感を刺激された。夢のようでいていて確かな存在への愛しさと憤り、恐れ、係わったものたちの幸も不幸も幻のようでいて根深い。2024/11/15
マツユキ
18
うにこおる、不思議な響きに惹かれましたが、ユニコーンの事。知っているようで、知らない。この作品では、魅惑的でいて、恐ろしい存在です。ユニコーン症ってなんだ。伯父のアパートで暮らす紺子と、彼女に興味を示す蜂飼い、アパートに越してきた男女。他にも、郵便局員とか、伯父と母とか。不器用な交流がいつまでも続くのかと思っていたら…。美しく、居心地良くも、恐ろしい作品でした。2022/09/29
シロうさぎ
16
神話では、非常に獰猛で、処女の懐に抱かれて初めておとなしくなるという一角獣。未婚者がそんな一角獣に孕ませられたとする不思議な心の病気を「ユニコーン症」と言う。そんなユニコーンに思いを囚われた人々のお話し。 とても優しい文体に包まれた美しくも不思議な物語でした。 でも、白黒はっきりつかないと落ち着かない性格の私としては、読み終わって、ちょっともやもやしたものが残ったかしら・・・。2013/10/24
みつ@---暗転。
7
**** ゆるりと漂っているような雰囲気。文字を追いながらその心地よさに、何度もするするとねむりに落ちることを繰り返しては読了。幻想に満ちていて、どこからが夢なのか、そもそも夢だったのか、よくわからない。雨音、笛、左耳の痣、蜂蜜、一角獣、蜂飼い、兄妹、向日葵、ユニコーン症などの美しいモチーフとその響きだけで楽しめる。背徳や禁忌といった要素を含みながら、まぼろしの一角獣を囲むように存在する物語。漫画描きの紺子、失踪した母、拳銃と蜂飼い、フジとハギオ。繊細で脆いニンゲンたち。柳太郎は、彼女を愛したのだと思う。2014/06/30
kai_sou@十五夜読書会
5
デビュー作が良かったので、楽しみにしていた作品です。やはりこの方の文章は透明感があって良いですね。綺麗なだけでなく、時折面妖でぞわりとするところもあって、そのバランスが心地好い。読み進めていくうちに、一角獣に魅せられてしまっている自分がいた。ぞわぞわする。だけど厭じゃない。作品の中から漂い来る独特の息遣いがとても好みです。不思議な余韻を残してくれる作品でした。次作も楽しみに待ちたいと思います。2013/06/01




