内容説明
60年間皇太子、国王在位は9年間、されど…第一次世界大戦前夜のヨーロッパに、外交的努力で平和の時代を築こうとした英国王エドワード七世。美食家で艶福家でもあった王の治世を詳細にたどる。
目次
第1章 「万年皇太子」バーティの旅路
第2章 「国王陛下万歳!」―英仏協商締結とバーティの活躍
第3章 ニッキーと同盟者のはざまで―日露戦争とイギリスの立場
第4章 バーティとテディ―新たなる英米関係の幕開け
第5章 ヨーロッパの火薬庫―バルカン問題とバーティ
第6章 愛憎半ばのバーティとウィリー―二〇世紀初頭の英独関係
第7章 バーティの死と世界大戦への道
著者等紹介
君塚直隆[キミズカナオタカ]
1967(昭和42)年、東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。1993‐94年、英国オックスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジ留学。上智大学大学院文学研究科博士課程修了。東京大学客員助教授、神奈川県立外語短期大学教授を経て、関東学院大学教授。専攻、イギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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本木英朗
15
君塚直隆さんの中でも俺が一番わかりやすかったのが、この『ベル・エポックの国際政治――エドワード七世と古典外交の時代』である。2012年、2015年にそれぞれ1回読んでいて、今回で3回目となる。第一章から第七章まで全部超面白かったけれど、中でも日本との同盟を描いた三章や、ドイツとのやり取りを描いた六章がいいよねえ。まあ、もちろん他のもみんないいけれどさあ。しかしエドワード七世が亡くなってからは、もうダメかもしれないことがわかったのが、ちょっと……。というわけでまたいずれ読もう。2019/11/30
MUNEKAZ
6
外交面を中心にしたエドワード七世の評伝。出不精な母ヴィクトリア女王の名代として長い皇太子時代に培った外交人脈や、華麗な親類関係を武器に列強の調整役を務めた姿が、読みやすい筆致で描かれている。興味深いのは内閣とは常に協調関係にあり、自身の各国王室との友誼と、国同士の関係を同一視しなかった点。英国が「栄光ある孤立」を維持できなくなる中で、政治家たちのハード面と王の担うソフト面をきちんと弁えていたからこそ、ヨーロッパに束の間の安定期が生まれたのだと思える。2018/06/06
メルセ・ひすい
4
巻頭のエドワード七世の葬儀に参列した9人の君主!まさに大英帝国が地球をわがものにし、植民地主義がキリスト教を世界教として人類を席巻しているかがかいま見える。 各々の君主はすべて縁戚関係。しかし、国益の為となれば為政者として国王として互いに戦争の先陣を切らなければならない。アングロサクソンの恐怖、大国の懐のひろい戦略の根拠、歴史が伺える。60年間皇太子、国王在位は9年間、されど…。第1次大戦前夜のヨーロッパに、外交的努力で平和の時代を築こうとした英国王エドワード7世。美食家で艶福家な王の治世を詳細にたどる。2012/10/27
kazutoshi
4
著者の「国王陛下三部作」の最後の作品。文章は相変わらず流麗で読みやすい。本書はエドワード7世の時代について描かれてる。第一次世界大戦前夜のヨーロッパに平和の時代を築き上げた英国王。大英帝国の軍事力だけでなく、国王のねばり強い外交努力がいかに平和をもたらしたかがよくわかる。2012/10/07
にかの
3
1900年代前半、所謂ベルエポック、英国ではエドワーディアンと呼ばれたエドワード7世の治世の外交及び国際関係をたどっていく本です。普段ヴィクトリア時代の影に隠れてこの時代と国王自身についてあまり書かれることはないのですが英国視点から様々な国との関係について書かれています。ただ、著者が言明しているとおりこれはあくまで英国視点から見た歴史であって、ドイツ帝国は悪し様に書かれています。この点、ドイツ近代史についても調査し、補強したうえで、この本を読む必要があります(『仏独共同通史第一次世界大戦』がおすすめです)2012/09/23