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春を恨んだりはしない―震災をめぐって考えたこと

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  • サイズ B6判/ページ数 123p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784120042614
  • NDC分類 369.31
  • Cコード C0095

内容説明

被災地の肉声、生き残った者の責務、国土、政治、エネルギーの未来図。旅する作家の機動力、物理の徒の知見、持てる力の全てを注ぎ込み、震災の現実を多面的にとらえる類書のない一冊。

目次

1 まえがき、あるいは死者たち
2 春を恨んだりはしない
3 あの日、あの後の日々
4 被災地の静寂
5 国土としての日本列島
6 避難所の前で
7 昔、原発というものがあった
8 政治に何ができるか
9 ヴォルテールの困惑

著者等紹介

池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年、北海道帯広市生まれ。75年から三年間ギリシャに暮らし、以後もしばしば旅に出る。『スティル・ライフ』で中央公論新人賞と芥川賞、『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、『すばらしい新世界』で芸術選奨文部科学大臣賞、ほか受賞多数

鷲尾和彦[ワシオカズヒコ]
1967年兵庫県生まれ。早稲田大学教育学部社会科学専修卒業。97年より独学で写真を撮り始める。2001年、清里フォトミュージアム主催「ヤングポートフォリオ」入選。06年、ガーディアン・ガーデン主催「フォトドキュメンタリーNIPPON」入選(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

350
3・11東日本大震災をめぐる池澤夏樹のアピール。前半は死者や犠牲者に心情的に寄り添ってゆく、いわばレクイエム。そして、後半は起こったことに対する彼の思索が語られてゆく。人は喪失を受け入れる。それは、そうするしかないからだ。春を恨んでもいいのだが、それは諦念の中に受容されてゆくしかない。地震と津波とは天災だった。したがって、我々にできることは哀しみを共有することしかない。しかし、原発事故は人災だ。そこでは「安全」は大前提だったのだから。だから緊急時のマニュアルも対策も何もなかったのだ。今に至るもそうなのだ。2015/05/02

Hideto-S@仮想書店 月舟書房

146
季節はめぐり、また春はやって来る。悲しい思い出を連れて来ても、春を恨んだりはしない……。東日本大震災に寄せたエッセイ、コラムを再構成した本。作者の悲しみ、怒り、そして『揺らぎ』が行間から立ち上ってきて、短い本だが心に響いた。被災地への支援はFeed(与える)ではなく、Share(補う)であること。原発に代わる再生可能エネルギーの必要性。政治やジャーナリズムに対し白けてはいけないという意志。「我々はみな、圏外に立つ評論家ではなく当事者なのだ」から。タイトルはヴィスワヴァ・シンボルスカの詩から採られたもの。2016/03/01

ぶち

105
読友さんのレビューで手に取りました。池澤夏樹さんが、被災地を歩いて、自らの目で耳で見聞きしたこと、考えたことを、淡々でいて明確な文章で伝えてくれます。その文章には死者に対しても残った人に対しても深い思いが籠っています。池澤さんは、自然災害を受け入れて黙って先に進んでいく心情は諸行無常を当たり前の事とする民族なのだろうとしています。それから転じて人災であった原子力発電の不可能性と政治への期待を記しているのですが、あれから10年、為政者には期待を裏切られることばかりです。まったく、変わっていません。2021/03/15

jam

97
“深草の野辺の桜し心あらばこの春よりは墨染に咲け”古今和歌集に収められたこの歌は震災後の著者の心に深く寄り添い、著書「詩のなぐさめ」「うつくしい列島」の中でも引かれている。震災から6年目の昨年の今頃、私はふたりの人を見送らねばならなかった。生命の間近にある自身の職業観さえも揺るがされるほどの別離だった。いつか見た写真のなかに咲く福島の桜は、咲き誇るほどに果てしなく、おのずとこの歌が想われた。今年も列島の桜が咲く。逝った季節は二度と帰らない。それでも春が来ることに人は慰められる。私に去年の桜の記憶はない。2018/03/10

どんぐり

83
3.11の年に「震災をめぐって考えたこと」を著したエッセイ。写真家の鷲尾氏が被災地で撮った白黒の写真も載っている。まえがきには、「これらすべてを忘れないこと。今も、これからも、我々の背後には死者たちがいる」とし、池澤氏が震災以来ずっと頭の中で響いていたというシンボルスカの『終わりと始まり』の詩を引用し、震災による何万という人の死に思いを馳せている。「またやって来たからといって 春を恨んだりはしない 例年のように自分の義務を 果たしているからといって 春を責めたりはしない わかっている わたしがいくら悲しく2016/07/14

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