人質の朗読会

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  • サイズ B6判/ページ数 247p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784120041952
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。

著者等紹介

小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山市に生まれる。早稲田大学第一文学部卒。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により第七回海燕新人文学賞を、91年、「妊娠カレンダー」により第一〇四回芥川賞を受賞。2004年、『博士の愛した数式』で第五五回読売文学賞と第一回本屋大賞を、06年、『ミーナの行進』で第四二回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

風眠

574
8人の人質はすでに死んでしまっていると分かっているなかで始まる物語。「いつになったら解放されるのかという未来」ではなく、「自分たちのなかにしまわれて」「決して損なわれない過去」に耳をすませることが必要なのだ。それぞれのささやかな日常の中から生まれる、ささやかな物語は、どんな光よりも強く生の輝きを放っている。日本の社会を支え生きている、名もなき人々への賛歌のように、心に深く残った作品でした。2011/10/30

めろんラブ 

548
3.11以降、多くの事象の意味合いがそれ以前とは異なるものとなった。小説もきっとそのひとつ。さて、この作品は非常に限定的な設定のもとに構築されているが、描かんとしている事はむしろ普遍的。誰にでも語るべき話がある。それを熟慮する時間と、黙して聞く相手に恵まれれば。語る機会を突然・永遠に失った「あの日」に思いを馳せてみる。どれ程の物語が失われたのか、絶望の出口はどこにあるのか、そして語るべきは・・・。暴力と相対する言葉の世界の静けさと、絶望の中にあっても尚幸福を見出す力を堪能できる逸品。2012/09/11

takaC

547
一夜目を読んで以降は残り七話とも最終行に興味を抱いて読み進んだ。そして前書きと呼応した第九夜は意味深かった。2013/10/06

とら

389
最高傑作かもしれない。またどんな奇妙な、でも優しい物語が始まるのかと思っていたら、今回奇妙なのは状況だった。とある外国のツアーに参加した参加者が、反政府ゲリラの襲撃を受けて拉致され、人質に。膠着状態が続いた後、軍と警察の特殊部隊が突撃し銃撃戦へ進展。ダイナマイトで人質全員が死亡━残されたのは、人質の朗読会の録音だけ━何だこれは?と冒頭から引き込まれた。もう、事後なのである。死んだ人たちの、生き様、というか自分が生きていた事の証明。その人にとって一番大切な事を選んだわけだから。はずれ作は無かった。全部良い。2013/02/16

早瀬主税

378
既に死んでしまったもの達の肉声は、暖かさや親密さを伴って、ラジオから流れて来るのでした。一貫して静かな日常の中の特別な偶然を切り取った物語が9作品並べられているこの小説の背景には、理不尽な暴力が横たわっていることがよりありありと強調される気がしました。物語の最後に書かれる年齢、職業、渡航目的に毎回頭を打たれるような衝撃を感じました。眼科医の冬眠中のヤマネと、工場経営者のコンソメスープ名人が好きでした。2014/10/02

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