内容説明
ローレーヌの精霊が息づく丘に修道院を再興した、三人兄弟の栄光と挫折。20世紀知の巨人による知られざる傑作。初邦訳。
著者等紹介
バレス,モーリス[バレス,モーリス][Barres,Maurice]
1862年、ローレーヌ地方ヴォジョ県に生まれる。8歳でプロシアによる占領を経験、ナンシー大学法学部を経て、83年パリ大学に移籍、“ローレーヌの魂”を自我の中に認め、“土地と血”の連帯を強調するに至り、88年小説『蛮族の目の前で』で一躍文名を高め、89年ナンシーから代議士に出、94年ドレフュス事件ではフランス統一を願う立場からゾラらと対立した。1905年の政教分離ではカトリック派とともに戦う。06年アカデミー入り、23年死去、国葬の礼を受ける。20世紀初頭の青年層にアナトール・フランスと人気を二分、フランソワ・モリヤックからポール・ニザンにまで影響を与えた
篠沢秀夫[シノザワヒデオ]
1933(昭和8)年、東京生まれ。学習院大学仏文、東大大学院修士課程卒、フランス政府給費留学生試験首席合格、パリ大学文学部現代文学免状。明治大学教授を経て、73年学習院大学文学部教授。学習院大学名誉教授。19世紀後半から今日までのフランス文学においての表現の問題を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
48
精霊の息吹く丘、キリスト教以前、遠い聖人たち、ローレーヌ公国の記憶を持つシオン=ヴォデモン。この丘を愛し、自らをローレーヌ君主や古い聖人、ヨブにさえ擬し、教会から破門される聖職者の主人公はどう見ても狂信者なのですが、彼が土地から生み出す夢、熱がこの幻視者に神秘のベールを投げかけ、その夢を気高く美しいものにしているように感じます。それは作者がこの時に沈む土地の歴史、精霊の息吹きこそ現在を「拡大する」、我々を前に進めるものだと信じていて、物語から感じる熱がその遠い霊感を信じさせてくれるからなのだと思いました。2019/02/08
loanmeadime
5
不信心な私ですが、信仰について考えさせられる一冊でした。俗な頭で考えれば狂信者になるレオポルを悪魔と言った自らの言葉に悩み続けたオーブリー神父にも二人の弟にも、ヴァントラスにも、真理を求めるベクトルがあったんだろうけど、その真理に対する謙虚さがお互いを近づけささない。神と自らを対峙させる人というのは、大変だなぁ、と思いました。終わりのころの草原と礼拝堂の代弁者の関わり合いに深い感銘を受けました。良い読書でした。2019/02/21
takao
1
ふむ2021/08/06