内容説明
米軍の「鉄の暴風」の中で特攻という「邪道の用兵」を的確な気象情報の提供という形で黙々とアシストし続けた男たち―。厳粛なる人間ドラマ。
目次
戦雲漂う沖縄地方気象台
南西諸島空・気象班
蚊坂の10・10空襲
逃げた台長、留まる技師
来る人、往く人
沖縄戦、火蓋を切る
特攻機に的確な気象報を
“邪道の用兵”を支えて
最初の犠牲者
梅雨戦線
活かし切れなかった気象報
多情多恨・南部落ち
笠原貞芳技師の最期
身を潜める壕もなく
琉球の風哀し
著者等紹介
田村洋三[タムラヨウゾウ]
1931年、大阪府吹田市生まれ。同志社大学文学部卒。大阪日日新聞社を経て64年、読売新聞大阪本社入社、社会部勤務。大阪読売新聞労組委員長、社会部次長、写真部長、社会部長、編集局次長、編集委員を歴任、93年、定年退職。現在、ノンフィクション作家。編著書に『新聞記者が語りつぐ戦争』(全20巻、読売新聞社、85年、第33回菊池寛賞受賞)などがある
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
a-park
2
戦死率86%(沖縄戦開始時の38名のうち生存者5名)という大きな被害を出しながらも、特攻機の突入援護のために気象観測を続けた沖縄気象台の記録 / 多くの証言に辺り、現地調査も重ねた丁寧な内容だからこそ気象台員たちのたどった凄惨な運命に読んでいて暗い気持ちになる2012/08/28
こばこ
0
爆撃を受け、戦地になった沖縄で、それでも国のために気象報を送り続けた人たちの話。状況はわからなくても、とにかく皆のため、国のためにと全力で通信をたやさまいとする人物のありようは心を打つ。職業人たるものこうあるものなのだろうなぁ 「分隊士、沖縄が玉砕したら、線香の1本も立ててくださいッ」という矢崎さんへの言葉が重い。2010/05/09
KN
0
極限状態、「緊急事態」になったときに人間の本性が問われる。責任感の強い人、不言実行の人、誠実な人、優しい人、真面目な人、情の深い人、滅私奉公な人、は、あの時代にもしかしたら絶滅したのかもしれないな…と、昨今の日本人の質と品性の変質ぶりを見るにつけ思う。2025/03/07
お茶漬け
0
特攻がいれば、無駄死にするかどうかは天候に左右される。これをサポートする気象予報士がいるのは当然のこと。 のはずなのに、この本を手に取るまでその存在は考えてもみなかった。 前線で観測を続けなければいけなかった若き気象予報士の卵、本土に家族を残してきた司令官。これにひきかえ逃亡する幹部…戦争という極限状態の中でも人間は人間なのだと痛感する。2019/08/01