内容説明
会社生活と文学を両立させてきて四十年。定年を控えた修吾が仄かに惹かれる同世代の従妹は、娘を乳癌で失う苦境に陥っている。その彼の前に現れたのは、夭折した先輩作家の初恋の女性だった…。ドイツ中都市と日本の美しい四季を背景に、自立をめざした二人の女性に導かれるように、主人公は、過去の部屋に入る。一枚のタペストリイのように繊細で甘美な感情を織りなす長篇小説。
著者等紹介
坂上弘[サカガミヒロシ]
1936年、東京に生まれる。慶応義塾大学文学部哲学科卒業。在学中、19歳の時「息子と恋人」(三田文学)が芥川賞候補になる。1959年「ある秋の出来事」で中央公論新人賞、1981年『初めの愛』(講談社)で芸術選奨新人賞、1992年『優しい碇泊地』(福武書店)で読売文学賞と芸術選奨文部大臣賞、『田園風景』(講談社)で野間文芸賞、1997年『台所』(新潮社)で川端康成文学賞をそれぞれ受賞
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