目次
第1部 民族学者のまなざし(人類学のあらたな地平;ムスリム社会の「女性解放」;噂のなかのルクソール;イスラーム世界と「世俗化」;フィールドの「年齢」 ほか)
第2部 現代世界と人類学の転換(近代における「伝統」―歴史人類学へのひとつのアプローチ;フィールドワークと民族誌の現在―「マリノフスキー」から「オリエンタリズム」へ;価値の普遍性と個別性―「開発の価値」と「価値の開発」;女子割礼および/または女性性器切除(FGM)―一人類学者の所感
文明化と「価値の開発」―ターリバーンの「暴挙」と文明)
著者等紹介
大塚和夫[オオツカカズオ]
1949年、北海道生まれ。80年、東京都立大学大学院社会人類学専攻博士課程単位修得。国立民族学博物館助手、助教授、東京都立大学人文学部助教授を経て、現在、同教授。博士(社会人類学)。専攻は、社会人類学、中東民族誌学。エジプト、北スーダンなどアラブ・ムスリム世界を中心に人類学調査・研究をおこなう
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感想・レビュー
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うえ
8
エジプトで未だ続けられる女子割礼(FGM)。FGM対策会議では告発する理由として欧米のように人権侵害を挙げたりはしないという。エジプト人の耳には入らないから。彼らの方法は、それがイスラームの義務ではないと強調すること。確かに男子割礼はムスリムの義務ではあるが、女子割礼はイスラーム法の面での根拠は薄いし、実際多くのムスリム諸国で実施されていないことを知らせるのだ。著者は人類学者が伝統文化の一部として無反省に資料を集め民族誌に記してきた、慣習の存否が当事者の間で生じていることに注意を促している。2020/10/07