内容説明
人間として「面白くもおかしくもない秀才」が戦前・戦後の40年に亙って独裁権力を行使し得たのはなぜか。
目次
第1部 模範将校はいかにして形成されたか(フランコの出自;近代スペインの背景;異例の昇進 ほか)
第2部 スペイン内戦(蜂起の前夜;クーデターの決行;内戦への変貌 ほか)
第3部 第二次世界大戦(第二次大戦の勃発;参戦と中立のはざまで;内政の危機 ほか)
第4部 戦後の生残り戦略(籠城コンプレクス;国際社会への復帰;ファランへ党政権の終焉 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
189
軍が二つに割れ、民衆も蜂起。領域をじわじわ確保するフランコの戦略は酷評されたが、彼はクーデタよりも内戦を想定していた。そうした戦略上のミス?を重ねつつ、独裁への道を駆け上っていく。WW2では中立を掲げながら、初めのうちドイツ潜水艦に補給基地を提供したが、結局、ヒトラーと会い、互いに失望して参戦しなかった。そしてヒトラーの関心はソ連に向かい、フランコは米英から食糧を得る必要があった。理想ではなく現実的に考えるフランコは、諸勢力の調停の上に権力を揮った人だ。ファッショ的でない所に彼の独裁の特異な性格があった。2024/12/25
ちまりん
19
大学のスペイン史では、著者が本書で語る「誤ったスペイン」が語られた。著者はフランコを擁護も否定もしない。ただありのままの事実が淡々と記されている。大学の講義は何だったんだ…スペイン内戦は第二次世界大戦の前哨戦と習ったし、モロッコで蜂起したのはフランコ自身だと習った。私の中ではフランコは極悪人だった。ピカソももう少し生き永らえれば、再び祖国の地を踏むことができたのにっていうその程度の浅い知識しか持ち合わせてなかった。フランコの印象が変わった一冊だった。2015/01/12
富士さん
4
世界に独裁者多しと言えど、フランシス・フランコ以上にうまくやりおおせた人は少ないのではないでしょうか。その秘密に興味を持って手に取ったのはいいのですが、初めて読んだ時はほんとにおもしろくなくて、とにかく通読しました。しかし、読み直してみるとこれが不思議に楽しく読めました。フランコには歴史に残ったり、人を迷わす理想や英雄性や魔性は見当たらない。ただただ日々を生き抜く天才だったようです。「驚くべき凡庸性」とはよく言ったもの。そんな人におもいしろさ感じられるようになったのは、年を取ったということかもしれません。2016/12/07
ハヤブサの竜
3
日本では否定的に語られるけど、欧州ではけっこう真面目に研究されてるそうな。政治家は結果なんだなあ2014/08/25
可兒
3
通説俗説をばっさばっさ切り払いながら、フランコの調停者としての一面を押し出してくる本。「うまい独裁者」ですらなかったという彼の新しい像を見せられて、ちょっと言葉が出ない2014/03/07