内容説明
宇宙の中心にように果てしなく広がるアメリカ中西部の大農場。不毛の湿原を曾祖父が開拓して以来、営々と築き上げてきた王国を、家長として君臨する父が、ある日突然、娘たちに譲る。さまざまな思惑に揺れる娘たち。そして家族の悲劇が始まる。92年度ピューリッツァー賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
103
アメリカ中西部アイオワ州の豊かな穀倉地帯で大農場を営むクックとその3人の娘たちの物語。「リア王」の設定と似ている。が、読み進めると娘たちの性格は大分異なっており、とりわけ3女のキャロラインが一筋縄ではいかない。物語の展開もそれなりに「工夫」されている。近隣の農場主とその家族、とりわけ若い息子たちとの絡み合いは想定内のプロット。だが、最後に、さしもの王国が脆くも崩壊してゆく様はあっけなく、「ゆく川の流れは…」と方丈記を思い出した。⇒2024/08/22
nakanaka
68
読了までに随分と時間をかけてしまいました。初めから終わりまで重苦しいような雰囲気が漂う作品です。一家の長であるラリーが三姉妹に自分の大農園を相続させようとするところから次第に暗雲が立ち込めてきます。登場人物に感情移入できる人がおらずなかなか読み進めることに苦労しました。それでも父親ラリーと娘たちとの危ない関係が明らかになるあたりからは面白いと思えた気がします。現代の「リア王」と呼ばれる作品のようです。間違いなく悲劇と言える内容ではありました。2017/06/19
NAO
61
親もただの人間で、子どものことなどこれっぽっちも理解しようとせず自分のことだけを考え、何人かいる子どもの中で誰が一番家族のため動いていたのかなどということは考えもせず、自分が気に入っている子どもだけをかわいがるとしたら、父のことを何とか理解しようと悩み苦しみ、父と一緒に暮らしていくためにいろいろなことを我慢させられ続けた子どもは、どうしたらいいのだろう。それに、最初からラリーの思い通りキャロラインにも土地を渡せたとして、彼は満足しただろうか。三人娘の確執もすさまじく、とにかく読んでいて辛い話だった。 2017/12/02
きりぱい
8
ピューリッツァー賞受賞で、現代のリア王という呼び声に惹かれて。アイオワの農場主が娘たちに農場を譲ろうとし、三女だけが除かれる。配役も設定もリア王を思わせるのだけど、現代の物語のほうが露骨に毒々しい。父から持ち出されたはずの譲り受けは、世間では姉二人が画策したのだ噂され、きしみの中で父娘、姉妹たちの関係がこじれてゆく。誰が不愉快って三女のキャロラインというのが本家と違うところなのだけど、それぞれに女の業のようなものが息苦しいほど見えてくる。それにしても父親の図太い恥知らずさには絶句。2011/07/26
本の紙魚
1
アイオワ州の農場を舞台に「リア王」を下敷きにした作品で、戯曲めいた雰囲気が漂う。大河の流れのような、と解説であるが前半はむしろ氷河を見るが如く我慢して読み進めた。この感覚はどこかで…そうだ、複式夢幻能「定家」あたりを観ている感じ。登場人物らが最後に昇華も成仏もしないところも同様だ。語り手の長女が、崩壊の兆しや開始に対してあくまで鈍感なのが傲慢にすら思えるが、後半「自分は父に1番愛されていなかった」と感じるところに長子ならではの孤独がみえた。色々と食べ物が出てくるのに、どれも美味しそうでないのはなぜだろう?2021/01/29
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