内容説明
歓喜、悲嘆、憎悪。時には生や死さえも溶解しのみつくす、灼熱の太陽、永遠の海。日々の暮しに遠い神話の世界がまざりあう物語の時間。禁忌と宥恕に包まれた、懐しい戒律の宇宙を、内から発せられる不思議な響きで語りあげた、美しくて残酷な南の島の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
76
梯久美子さんの『狂うひと』で引用されているのに興味を持ち、読む。島言葉、相撲大会、バンシロウの実、地主への敬意などというのどかな描写と同時に座敷牢、レイプ、ネグレクト、癩病、一人親への冷ややかな視線などの今も変わらない人間の排他性も描かれていて冷水を浴びせられる。そして作者自身が投影されているミホだが『死の棘』同様、本当に大概な女の子だと思わずにいられない。特に「紅石」でどっちもどっちな子供の喧嘩に大人の事情が絡んで、一方的に悪者にされて祖父に殴られるキワが怯えるだけのミホに対する叫びが一番、胸に落ちた2018/01/12
ノラネコ・ジョーンズ
3
死の棘を読んで、あの嫁さんが書いた本ってどんな?と思い注目。かなり衝撃受けました。私にとっちゃ何年に一度の衝撃。この素朴さ、残虐さ、そして神々しさ。おかげで民俗学に目覚めちゃったよ。海辺の~に比べて小説テイストになっている。この島尾ミホワールドはすごい…。この路線で続けたらいずれ息詰まるのかもしれないけど、あ~もっとこのお方の作品が読みたかった(泣)。非常に残念。今頃天国で島尾隊長と睦まじく暮らしておられるでしょう。
ハミーネス
2
前近代という時代は、もはやファンタジーだ。ライ病の少年が教室に通い、禁を犯した男女が焼き殺されかけ、気がふれたと思われた人間が、海辺の牢に監禁される。生者も死者も、こっくりと深い闇の中で容易に溶け合う。もう失われたからこそ、甘く残酷で優しい。2015/07/05
びす子ちゃん
1
「島は劇場である」という言葉を思い出す短編集。島で生まれ育った作者はその美しさだけでなく、恐ろしさももとより知っている。内地の言葉が波だったような不思議な響きの台詞や歌。島という限られた空間の摩訶不思議に迷いこむ。2017/10/11
Kaopn
0
島尾ミホ本人の幼少時代の記憶をもとに書かれている文章だと知らなかったらかなりとまどったと思う。加計呂麻島の戦前の風習や文化がわかる。美しい島の情景とダークなエピソード。祭り裏との表題どおり。好きかどうかは別として印象に残る本となった。2018/02/15
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