出版社内容情報
うらぶれた漁師町の住人たちに翻弄されながら、ぎりぎりの日々を暮らす売れない小説家の私――。周五郎の極点、傑作自伝的小説!
朴訥でお人好し、時に油断ならない隣人たちとの日々――。自伝的小説の傑作! うらぶれた漁師町に住みつき、ぎりぎりの毎日を暮す売れない小説家の「私」。ぶっくれ舟の「青べか」を手もなく買わされ、計算高い少年たちにも翻弄される。その町には、一筋縄ではいかない人びとがしたたかに生きていた……。自らの若き日の体験をもとに、愛すべき人びととの出会いを描く、周五郎文学の一つの頂点! 付年譜。
内容説明
うらぶれた漁師町に住みつき、ぎりぎりの毎日を暮す売れない小説家の「私」。ぶっくれ舟の「青べか」をていよく買わされ、計算高い少年たちにも翻弄される。「ごったくや」の女たちは、いけ好かない男から金を巻きあげ、五色揚屋の亭主は、夫婦喧嘩の果てに店をぶち壊す…。朴訥でお人好し、しかし油断ならない隣人たちとの愛おしい日々―。「私」は呟く、「苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である」自らの若き日の体験をもとに、一筋縄ではいかない愛すべき人びととの出会いを描く、周五郎文学の絶頂の輝き!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かおる
4
山本周五郎が25~26歳のころに滞在していた浦安での体験を30年後に同タイトルで発表した。そこに住む人々の奇妙な生活は、30年という長い年月保留されることによって、ようやく理解され小説という形になった。生活者のアンソロジー、なかでも「芦の中の一夜」が好き。「ぶっくれ」の「青べか」に揺られ、読みかけの本を顔にかぶせて昼寝。。。いいなあ。 2022/04/06
訪問者
4
作者の若き頃を思わせる主人公が住む海辺の町の物語。時は昭和初期であり、幾分かのノスタルジーと猥雑さ。そしてまた「白い人たち」のような現代では考えられないような劣悪な環境下での工場労働と刃傷沙汰。あるいはまた、物語のここかしこに見える海辺の町のかなり赤裸々な男女関係。そこには忘れえぬ人々の住む世界が息づいている。2017/04/21
ポン
4
沢木耕太郎『山本周五郎と私 青春の救済』 鋭い論評が興味深いです2015/10/15
たつや
3
現在の浦安が舞台とは到底信じられないほど、人は強欲で底辺であるが、「季節のない街」同様に人間臭く、山本周五郎らしい一冊です。2024/07/16
マウンテンゴリラ
3
肌で感じたことも、見たことも触れたこともない風景や人々。であるにも関わらず、懐かしさを感じる物語。これも山本周五郎の真骨頂の1つであったかと感じさせてくれるものがあった。時代を隔ててもこのような郷愁を感じさせる何かがあるのだろうが、それが何かを明確に言うこともできない。それが論理では割りきれない文学の魅力であるということをあらためて、というか、遅ればせながら感じることができた。一般的には、実証可能な論理を越えて共有される価値と言えば、まず宗教的価値というものがあげられるだろう。→(2)2016/11/12