出版社内容情報
読める、わかる――21世紀の小林秀雄。
昭和34年57歳の初夏、『文藝春秋』に始めた「考えるヒント」。愛情、常識、道徳など身近な事柄から入って多様に語り、毎回読者を発奮させたエッセイの至芸。ほかに「ゴルフの名人」「無私の精神」など。
内容説明
一九六〇年代、人びとは考えることの楽しさを知った。常識、良心、忠臣蔵…身近な話題から入って多様に語る、随想シリーズ“考えるヒント”で知った―。
目次
ペレアスとメリザンド
スポーツ
ゴルフの名人
「近代絵画」受賞の言葉
エリオット
好き嫌い
常識
プラトンの「国家」
井伏君の「貸間あり」
読者〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
89
これは昔、文春文庫で読んだ覚えがあります。小林の作品としては後期に属するもので、初期の文芸評論などとは異なりかなり読みやすくなっています。また以前は読んでいても多分なかったと思うのですが、ここでは注釈がかなり細かにつけられています。読みやすいとはいうもののやはり文章は現在の様々な本の文章と比べるとそれなりに格調が高く感じます。私の印象に残ったものは「平家物語」と「本居宣長」です。2023/12/12
静かな生活
2
90点*「あっ敵わねえ」となった。大岡昇平ですらそうさせたのだからしょうがない。文学者モドキだとしての批判が多くあるのは知っている。勿論キビシイ保守おじさん臭もする。しかし「固有名詞」を相対化して「日本の文化」に肉薄するその姿は江藤淳や吉本隆明以降の「知の巨人」ポジションに向かって途方もなく連続していく。2020/04/06
神田カリ太郎
2
小林秀雄に初めて会ったのは高校の国語の模試でした。勿論著者もタイトル覚えてませんでしたが、考えるヒントの「無常といふ事」の一節が出てその余りの意味不明さにずっと印象に残り続けました。タイトルと著者の正体(笑)がわかったのはずっと後のことでした。今では何となくわかる気がします。不思議ですが。すごく変なことをいうと頭でわかろうとしてはダメな文章なのかもしれません笑
1
再読。解説で、大岡昇平が述べるように、小林秀雄が文芸批評から離れたというよりは、美術/音楽などというように「文学」だけでなく芸術それ自体を成立させる「詩的なもの 」(=ポエジー)の在り処を指し示そうとするというように対象を拡大させたに過ぎない。そういう意味では一貫してフォルマリストとして振舞っているに過ぎないのだが、小林の場合は、「芸術と実生活(行動)」の問題を媒介させることによって、有機的な「歴史」に対しての気づきを教えようとする。2023/08/25
ありす
1
「外国語とは、日本語と同じ意味を持った異なった記号ではない。英語とは見た事も聞いた事もない英国人の動作である。これに近附く為には、これに似せた動作を自ら行う他はない。まさしく習熟する唯一つのやり方である。」p.1112009/06/04