出版社内容情報
読める、わかる――21世紀の小林秀雄。
昭和10年33歳、日本の近代小説が負った特殊な運命を、西洋、とくにフランスの近代小説との対比において説き起し解き明した「私小説論」。さらにヴァレリーの“哲学小説”風作品「テスト氏」の全訳。
内容説明
昭和一〇年三三歳。“私小説は死んだ”と、強い言葉で結んだ「私小説論」。その向こうに小林秀雄が見ていたものは何だったか、何を待ち望んだのか。併せてヴァレリー「テスト氏」の全訳。
目次
翻訳/テスト氏(ポオル・ヴァレリイ著)
「バルザック全集」1
文芸月評5
時評家の危険
文芸時評に就いて
文芸月評6
谷崎潤一郎「文章読本」
中原中也の「山羊の歌」
「校友会雑誌」懸賞小説選後感想
シェストフの読者に望む〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1
再読。「私小説論」はプロレタリア文学壊滅後に、マルクス主義の理論が日本的封建制の切断の可能性(=「社会化された私」)をもたらしたと評価する。ある意味では、人民戦線の可能性を、この時期の小林が考えていたことは明白だろう。ただ、「私小説は滅びたが、人々は『私』を征服したらうか」という問いかけは無視されたまま戦時下に突入する。蔵原惟人と小林秀雄をジンテーゼすることを目的とした「近代文学派」はこの地点まで戻って戦後をスタートさせるが、今現在もシミのように付着したそれを厄払いは出来たか。2023/08/11
ブルーツ・リー
1
ちょうど文学と実生活の関係性に悩んでいたところに「私小説論」やはり過去の作家も、これは悩むところだろうな、と思いました。自分がついに結論を出せないでいるのも、これだけの大作家をも悩ませるテーマなのであって、これは文学を、特に純文学をやるならば、避ける事のできない悩みなのではないかと、やや観念した次第です。 結論としての「私小説が死んだ」に関しては、昭和9年に弾圧によってプロレタリア文学が壊滅した事態を鑑みたものと思われ、私小説の死ではなく、プロレタリア文学の死であると読みました。2020/03/12
MatsumotoShuji
0
030327