出版社内容情報
家風への反逆、快楽主義の謳歌。女体遍歴を重ねながらも女性を愛することなく、反時代の姿勢を貫き、鋭い文明批評を体現した生きかたそのものの魅力の源泉を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
265
荷風が生まれたのは明治12(1879)年。漱石より12歳下、谷崎より7歳上である。そんな位置ゆえにか、現在では人気も評価も今一つ(不当にも)のような気がする。一番好きな作家に荷風を上げる人はいたって少なそうだ。経歴の上でユニークなのは、落語家に弟子入りし(20歳)三遊亭夢之助の名で高座に上がったり、歌舞伎の立作者の門人となったりもしている。こういうところは、遅れてきた江戸を背負っていたのであったか。その一方で、父親の意向もあってアメリカ、次いではフランスに渡っている。モダニスト荷風の側面である。⇒2025/02/13
双海(ふたみ)
8
荷風の書画がまたいい。2014/03/18
kuukazoo
7
荷風先生ミーハー月間につき手を出してしまった。お馴染みのお写真のほか、肉筆原稿、手紙、葉書、書画、地図などビジュアル満載。さらっと描いた絵もへたうま(むっちゃ失礼)感があって良さげ。手書きの字が好きなのだが、昔の人は達筆すぎて読めない(笑)。現代日本人は大切なスキルを失ってしまった(泣)。それにしても若い頃の美男子ぶりが際立つ。つくづく良家の長男で実業界でのエリートコースを期待されていたのにドロップアウトしたというのは、自ら選んだのだとしてもいろいろ葛藤があったのだろうか。遠藤周作の辛口エッセイ掲載。2020/07/23
果てなき冒険たまこ
2
明治期の作家の中で数少ない「読みたくなる」作家永井荷風。その生涯を少ないページながら資料満載で追いかけていくというシリーズ本。荷風以外で読んでみたいのは吉川英治くらいかなぁ、というくらいこの時期の作家さんには興味がなくてね。作家本人と作品は同じものではなくて本人から少しずれたものが作品となることが多いと思っているので読む上での助けにはなるかもしれないけどこれがメインじゃないことも肝に銘じなきゃ読み誤るよね。それにしても版が小さいので字が小さすぎる。。2024/07/14
屋根裏部屋のふくろう🦉
2
この本に出会ったのが13年前。小説家として生き孤独のうちにその生涯を終えた荷風に興味を持った。「三浦朱門が『志破れた時に読む作家だ』と評していた」と遠藤周作が書いているが、小生もまさにそういう時に荷風に出会ってしまった。そして今も岩波文庫の荷風のものを読まんとしている。 そういえば、米国や仏蘭西に、当時、自費(荷風の父のお金)で渡航した人は荷風くらいではないかしらん。2018/02/02