内容説明
「すべて中韓の陰謀だ」「いや諸悪の根源は現政権だ」―無知に気付かず、自らの正義を疑わず、対話を拒否し、ひたすら他者を攻撃する。ネット上で日常的な光景となった罵り合いの主役が、ネトウヨとパヨクだ。時に世論をも動かす彼らの影響は、今や中高生にまで及びつつある。眩暈のするようなおかしな論理や、無尽蔵のエネルギーはどこから生まれるのか。行動原理や心理を読み解き、建設的な議論への道を探る。
目次
第1章 ステレオタイプなネトウヨ・パヨク論を振り返ろう
第2章 眩暈がするような主張を繰り返すネット上の人々
第3章 結論しかない主張は最強である
第4章 無尽蔵のエネルギーが対話相手を疲弊させる
第5章 「真っ白な中高生」に迫るネットの主張
第6章 ネトウヨやパヨクの終着点
終章 それでも、対話をする心構えを持たなくてはならない
著者等紹介
物江潤[モノエジュン]
1985(昭和60)年、福島県生まれ。2008年、早稲田大学理工学部社会環境工学科を卒業後、東北電力株式会社に入社。2011年2月、同社を退社。現在は地元・福島で塾を経営する傍ら、フィールドワークと執筆にも取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
65
著者の誠実さが感じられる。元電力会社社員、松下政経塾出身、福島在住という「炎上」ネタを背負いながら、「ネトウヨ」や「パヨク」と真摯な議論を試み挫折した経験をもとにに、彼らの危うさや影響の大きさについて警鐘を鳴らす。私も人並みにネットで色々な情報を見る。結論ありき、相手を罵るだけのものには心底うんざりする。でも気がつけば、考えの近いものばかり追いかけてはいないか。嫌なヤツが嘲笑されるのを見て溜飲を下げてはいないか。絶対的正義を語る者の危うさ、それに抗するしなやかな知を持つことの難しさ。自分への戒めとしたい。2019/07/10
Miyoshi Hirotaka
42
右翼といえば街宣車に特攻服、左翼は赤ヘルにゲバ棒だったが、活動の場所がネットに移り、ネトウヨとパヨクと呼ばれるようになった。呼称が変わっても行動は同じ。無知に気付かず、自らの正義を疑わず、対話を否定し、他者を攻撃する。昔であれば拡声器の声が届く範囲に近づかなければ済んだが、ネット時代になり、拡散される範囲が桁違いになった。さらに厄介なのは政治や思想に免疫や抵抗力がない中高生までが影響を受けてしまうこと。ヒトラーは、新聞とラジオしかなかった時代に誕生。毛沢東は紅衛兵を扇動し、人口構成に影響する損害を出した。2020/02/08
HMax
41
ネトウヨとパヨクの話しかと思ったら、建設的な議論を妨げる象徴的な存在としてネトウヨとパヨクを取り上げ、「如何にして対話をする心構えをもつか」というためになる話しでした。「俺は論破がしたい」と全く相手に歩み寄らず、打ち負かすことに全力を注ぐ政治家や有識者。「結論しかない主張、自分は必ず正しい」という人との成立しな対話を成立させるのは困難ですが、自分がそうならないためには、1.自らの主張は仮説にすぎないと確信する。2.人の発言権を奪わない。3.どれほど奇妙奇天烈に思える主張でも論拠や事実で良し悪しを判定する。2020/06/27
イトノコ
32
図書館本。ネトウヨ・パヨクを「政治的主張をもつ対話不可能な人」とし、その傾向と影響、対策を解説。通しての著者のニュートラル立場には好感が持て、内容にも納得。特に文中に頻出する①事実②理由付け③主張の議論モデル。これは私が日頃感じる、「義憤(に見える主張)は突き詰めるとただの私憤」という印象とも合致している。つまり、②が「自分がムカついた、嫌い」だと言うこと。それが狭い世界で語られているだけなら可愛いものだが、それは理論武装した上でネット内の「島宇宙」で増幅され、リアルに無視できない影響力を持つようになる。2020/12/13
リキヨシオ
25
著者曰く「保守・リベラル」と「ネトウヨ・パヨク」の違いは「対話可能か対話不能であるか」で分類すればいいとの事。しかし自分が絶対正しい!相手の事を対話不能と決めつけるとしたら、著者もネトウヨもパヨクも案外似ているのかもしれない…と思ったけど、最近のコロナという正解のない難しい問題に自分が正しいと感じる身近な意見を切り取り主張してウィルスではなく異なる意見の相手を徹底的に罵る。対話可能、対話不能だけでなく、世間全体の情報に対する接し方、情報の切り取り方が大きく変化してきたのではないかと思った。2020/03/13
-
- 和書
- 徳川吉宗と大岡越前守