内容説明
ガバッと起きると午前二時、それが不眠生活の幕開けだった。毎夜同じ時刻に目が覚めて、眠れないまま朝になる。七十歳にして探険旅行に挑み、ビールだけは欠かさぬ豪快さの持ち主には三十五年にわたる孤独な「タタカイ」があった。発端となった独立騒動、はかられた精神科受診、手放せない睡眠薬、ストーカー事件のトラウマ、眠気をさそう試行錯誤等を初めて告白。果たして「やわらかな眠り」は取り戻せるのか。
目次
はじまりは唐突にやってきた
勤めをやめるか、どうするか
ライオンのように眠りたかった
見知らぬ女が押しかけてきた
なぜ眠る必要があるのだろうか
こころやすらかに寝られる場所は
睡眠薬は脳に何をしているのか
ポル・ポトの凶悪にすぎる拷問椅子
イネムリが人生で一番ここちよい
睡眠グッズはどれほど効くか
やわらかい眠りをやっと見つけた)
著者等紹介
椎名誠[シイナマコト]
1944(昭和19)年東京都生まれ。作家。『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
147
椎名さんが不眠症で苦しんでいたとは知らなかった。エッセイなどから受ける印象で陽性で冒険家の人と思っていたので、この本を読んでかなり驚いた。私も以前全く眠れないことがあったので、ここに書いてあることは他人事とは思えなかった。ストーカー事件が不眠のきっかけになったのは、痛ましいことだと思う。睡眠についての雑学もいろいろ書かれており、興味深く読んだ。アルコールを飲むより、睡眠薬を使った方が良いと言うのは役に立つアドバイスだ。2018/05/29
中玉ケビン砂糖
106
、小学校の教科書にもエッセイが載るくらいだから、椎名誠という作家はなんとなく「いろんなところへ冒険しに行く人」というイメージしかなかったが、SF小説家としても白眉であることを知りびっくりした「特に『アド・バード』」、ただ彼の言う「眠れない」という要素は小説家という特殊な業種につきもののもので、しかもショッキングな白いストーカー女のせいでもあるというものなので、さして深刻なものではないのだろうなと感じた2015/03/07
キク
78
椎名というと、仲間と新宿で飲み、キャンプにいって騒ぎ、自然を愛する男というイメージだ。なので35年間不眠症と知って、すごく意外だった。でも、まあ、適当に現実を誤魔化せるタイプでは絶対にないので不眠症にはなりやすいんだろうな。35年戦っての結論は「正常睡眠に戻していこう、という方針は捨てた。日々をうまくやりくりして、残りの人生を気負いなく生きていければいいやと思う。テキは自分なのだから、自分で道を模索するしかない」とのこと。テキは世界ではなく自分なんだという認識って、厳しいけれど健全で正しいよな、結局。2023/02/21
kinkin
55
不眠に酒は相反するもの。この言葉は、自分にも経験があるのでよくわかりました。全体に、いつもの椎名節があまり冴えていなかったような・・・・2014/12/10
ホークス
48
なんと椎名誠が不眠症だった。36歳でモノカキになった頃からで、今も続いているという。世の中には不眠に苦しむ人が多く、自分もいつ同じ状況になるか分からない。訝る著者を上手く精神科に誘導した奥さんは立派だ。昼夜逆転で酒を飲み過ぎ、色んな仕事を受けまくれば頑丈な人でも病む。さらに女ストーカーの襲撃も重なり、睡眠薬の量は増え続ける。色々調べても決定的な解決策はなく、手当たり次第に軽減法を探すしかないのは腰痛や頭痛に通じる。長年の苦しみを著者らしい明るさで解説した労作である。2017/10/12