内容説明
人口わずか七五〇万の小国イスラエルは、度重なる戦争を切り抜けながら、いかにして超大国アメリカを動かすに至ったか―。そのおそるべき危機管理能力、国防意識、そして周到な外交術とは。強固な二国間関係を生んだ「伝説のロビイスト」や米国ユダヤ系社会から、ホロコーストの生き証人らユダヤ移民たち、そして情報機関モサドの元長官にペレス現大統領まで。四年におよぶ取材を通じて迫った、生身のユダヤ国家。
目次
1 アメリカとの絆
2 強固な二国間関係
3 イスラエル・ロビーとは何者か
4 かき消される疑問
5 エルサレムの今昔
6 ユダヤ人の国
7 何も信じない、誰も頼らない
8 変わりゆく国の姿
著者等紹介
三井美奈[ミツイミナ]
1967(昭和42)年、奈良県生まれ。読売新聞記者。一橋大学社会学部卒。社会部、国際部、ブリュッセル支局特派員などを経て、2006~09年エルサレム支局長。ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員として一年を過ごし、国際部へ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
30
迫害の歴史の重み。背景に宗教。エルサレムが象徴。政財界に広がる巨大なネットワークが、人・物・金の源泉。大国の思惑が、時勢を左右。英国の”放棄”に、米国の利権・・・。巻末の若者の疲弊が、様々な”矛盾”への回答ではなかろうか。矛盾の象徴がノーベル平和賞。一進一退のパレスチナ問題解決の起爆剤とでも考えているのだろうか・・・。長年培った不信感と、根本的な宗教の違い。鳩山元首相がLoopyなのは今更だが、日本の貢献とは如何にあるべきか・・・。2015/04/07
かわうそ
29
★★★☆☆イスラエルがなぜ小さい領土のうえに人口750万人で世界を動かせるのか?それには当然アメリカにおけるイスラエルロビーの存在が大きい、アメリカの民主党がイスラエルロビーから支援を受けているのは有名な話。フリーマン氏はイスラエルに重きをおきすぎて、パレスチナの人々のことをまったく考えてないと政府を批判すると人格を壊されるまでにイスラエルロビーによって追い詰められたという。イスラエルのネタニヤフ首相がイランの核合意をしたオバマ政権を批判できたのもアメリカにおけるイスラエルロビーの強さを示している2016/08/23
マーム
25
イスラエルには米国の強力な後ろ盾(ユダヤ人ロビイスト)が存在することを再認識しました。そして米国の政治家が親イスラエル政策に疑問を呈したり異議を唱えたりすると、激しい攻撃に晒されるという実情には暗澹たる思いがします。米国の影響力が強すぎるがためにイスラエルの趨勢が自国民で決められない面があるという事実には驚きを禁じ得ません。その頑なな国民性には時として苛立ちを感じてしまいますが、特異な国だからと思考停止するのではなく、まずは関心を持つこと、十分に理解できなくても実情を知る努力が必要なのだろうと感じました。2012/05/21
masabi
18
イスラエルを取り巻く問題を内外の人々のインタビューを交えながら見ていく。対米ではユダヤロビーの資金・組織の両面でカネ・票によって影響力を強めるとともに中東で数少ない西洋的な価値を共有する国として特別な地位にある。対パレスチナでは加害者の面が強い。和平交渉は停滞している。国家安全保障が第一であり、国益に叶うのなら暗殺や核施設への攻撃など手段を問わない。問題は依然としてテロや攻撃の最前線であることと若者を中心にイスラエルからの流出が見られることだ。2016/06/21
遊々亭おさる
17
自分以外はすべて敵。やられる前に潰してしまえ。苦難の歴史の果てに建国されたイスラエル。その歴史ゆえにいつの時代も戦禍にまみれる国なのに、同時に驚異的な経済成長をも成し遂げた不思議な国家の入門書。イスラエルの後ろにはアメリカあり。米国籍のユダヤ人が、にわかプロ野球ファンのように中長期的視点を欠如させたまま、議会を動かしイスラエルの後ろ楯となっていて、これが中東における反米の温床のひとつになっているとは著者の指摘。若者の厭戦気分や国離れも進んでいるようで、この辺りが和平への突破口となるか。2010年9月初版。2017/02/03