出版社内容情報
川本 三郎[カワモト サブロウ]
著・文・その他
内容説明
敗戦から昭和三十年代にかけて、急速な経済成長の中で失われた様ざまな習慣、やさしく奥深い言葉の数々、変わりゆく家族のかたち、東京の町並…それらをいとおしみ、表現し、そして体現し続けた向田邦子。様変わりした現代において、今なお高い人気を誇る作品群をひもとき、早世の天才作家が大切に守り続けたものとは何かをつづる。
目次
序章 昭和の女学生
第1章 父母のいませし頃の懐かしい言葉
第2章 家族の記憶と食
第3章 「向田家の父」と「昭和の父」
第4章 お嬢さん、実社会へ
第5章 家族のなかの秘密と嘘
最終章 向田邦子と東京の町
著者等紹介
川本三郎[カワモトサブロウ]
1944(昭和19)年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、朝日新聞社を経て評論家。文学や映画、都市論など多方面で活躍している。『大正幻影』(サントリー学芸賞)、『荷風と東京』(読売文学賞)、『林芙美子の昭和』(桑原武夫学芸賞・毎日出版文化賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つちのこ
42
向田作品を読んで思うことは、体の中にすぅーと入ってくる心地よさと、得も言われぬ懐かしさ。なんでだろうなぁ、と思っていた。その答えは本書の序章にあった。向田邦子はノスタルジーにこだわった作家であり、“卓袱台のある暮し”の記憶を大切にしていたという。文章にゆったりとした味わいがあるのは、古い言葉をあえて使っていたからだろうか。さすがにご不浄とは言わないが、無機的なトイレよりは、より丁寧な言葉として受け取れる。昭和30年代を境に消えた生活道具や習慣、言葉は数知れず。郷愁を誘う向田作品との関連性を面白く読めた。2024/12/20
おさむ
41
向田邦子がドラマやエッセイで描いたのは、戦前の昭和の家族の風景。とりわけ山の手の中流階級の暮らし。1970年代から80年代にかけて失われてしまっただけに、向田作品は読者にとっては記憶を呼び起こす格好の材料になる。男はつらいよシリーズが描いたのは失われゆく地方の風景でした。鉄道やバス、日本旅館‥。地方と東京。舞台は違えど、今なお絶大な人気を誇る向田作品と寅さん。その理由の一端を垣間見たような気がします。2017/10/09
kinupon
34
向田作品をもう一度読み返そうと思っています。特に今は使われなくなた日本語を探してみようと思います。2015/07/11
あきあかね
27
テレビドラマなどで使われる食べ物は、一回きりで無くなってしまうので「消え物」と呼ばれる。しかし、向田邦子のエッセイや小説では、食べ物が家族の記憶や人物の微妙な心情、時に人生そのものを表す。消えて無くなる儚い小道具ではなく、食べ物こそが主役と言っても過言ではないだろう。 東京大空襲の翌朝、死を覚悟した父親の提案で、取っておきの白米を釜いっぱいに炊き上げ、埋めてあったさつまいもで精進揚をこしらえた記憶。愛する家族を守ることのできない父親としての口惜しさ、無念さ。向田邦子は「みじめで滑稽な最後の昼餐」と⇒2020/01/12
kinkin
23
向田作品を読む上での副読本のようなものかもしれない。ただ本だけで向田作品の昭和を感じるのは大変だ。そのころの風俗や世相、言葉使いなども調べたほうがイイと感じた。2013/04/09