内容説明
大麻・売春・同性結婚と同じく、安楽死が認められる国オランダ。わずか三十年で実現された世界初の合法安楽死は、回復の見込みのない患者にとって、いまや当然かつ正当な権利となった。しかし、末期患者の尊厳を守り、苦痛から解放するその選択肢は、一方で人々に「間引き」「姥捨て」「自殺」という、古くて新しい生死の線引きについて問いかける―。「最期の自由」をめぐる、最先端の現実とは。
目次
第1章 「死ぬ権利」がある国
第2章 オランダ安楽死の歩み
第3章 世界初の「安楽死法」
第4章 医療・福祉システムの基盤
第5章 制度を支える人たち
第6章 子供と痴呆高齢者
第7章 自殺との境界線
第8章 赤ちゃんの安楽死
第9章 安楽死を可能にした歴史
第10章 ベルギーとスイスの場合
第11章 日本で安楽死制度は可能か
著者等紹介
三井美奈[ミツイミナ]
1967(昭和42)年奈良県生まれ。読売新聞記者。89年、一橋大学社会学部卒業、読売新聞社入社。東北総局、本社社会部、同外報部を経て98年から2001年までブリュッセル支局特派員。EU、NATOの動向に加え、オランダ安楽死問題を精力的に取材。現・東北総局勤務
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感想・レビュー
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香菜子(かなこ・Kanako)
39
安楽死のできる国。三井美奈先生の著書。安楽死は難しい問題だけれど、個人の意思が尊重されることは素晴らしいこと。オランダは、安楽死だけでなく、同性婚や大麻の合法化が進んでいる徹底した個人主義社会。日本もオランダから学ぶところもあると思います。2019/08/12
金吾
29
安楽死が認められているオランダの話はかなり興味を覚えました。安楽死の幅が日本で論じられているものとかなり違うのが印象的でした。ケースバイケースのような気もしますが、そうはいかないのだろうなあと思いました。2023/12/03
テツ
25
そう思わない人に対して決して否定も啓蒙もしようとは考えないが、僕自身は自分で自分の食い扶持も稼げなくなったら国になんて養って貰わずにとっとと安楽死させて欲しいと常日頃から考えているので本書に書かれているオランダの合法的な安楽死の在り方はとても勉強になった。大前提としてしっかりと長期に渡り考え抜いた上で自らの生命を断ちたいと願っているのならばその最期の自由を最大限に尊重してくれる社会であって欲しいと思う(認知症や知的障害の方は恐らく選択する力が残っていないのでその選択を認めるべきではないと思うが)2017/03/24
猫丸
19
良書。読みやすい文章である。成績が良いからとりあえず医学部へ入ろうかと考える高校生、そろそろお迎えを意識するベテラン世代などに広くおすすめできる。キリスト教の支配下にない日本は安楽死への圧力は小さいはずなのだが、オランダを始めとする安楽死先進国に大きく遅れをとっている。法整備が進まないためだが、これは「票にならない活動はしない」が絶対化している政治屋の下劣な根性が原因だ。安楽死によって利益を得る団体が族議員と癒着するのを待つしかない国なんだから情けない。本書にいう安楽死一般化のための4条件も揃っていない。2022/09/22
オフィス助け舟
12
積ん読のまま置いていた本。さいきん、「安楽死が合法の国で起こっていること」が話題のようで、それに無意識に触発されたのか、積み読本を保管しているカゴから引っ張り出した。2003年の本、オランダの安楽死に関する法律や価値観が紹介されるとともに、その当時に議論されていた子どもや痴呆病者に安楽死を認めるか、という話も。それを踏まえて終盤には日本における安楽死の議論の現状にも触れられている。オランダという国の、何でもタブーにせずに白日のものに管理する方針には驚く。憧憬と釈然としない気持ちが混ざって落ち着かない。2024/03/26