出版社内容情報
「極東1905年体制」から考える、新しい安全保障論。「米国の戦争に巻き込まれたくない」「軍事協力は最低限に留めたい」――こんな「日本だけの都合と願望」はもはや通用しない。同盟の抑止力を高め、平和を維持するには「日本的視点」を克服した「第三者的視点」を取り入れる必要がある。基地使用、事態対処から拡大抑止まで、意外な盲点から安全保障の課題を突く警鐘の書。
内容説明
「極東一九〇五年体制」から考える、新しい安全保障論。「米国の戦争に巻き込まれたくない」「軍事協力は最低限に留めたい」―こんな「日本だけの都合と願望」はもはや通用しない。日米同盟の抑止力を高め、平和を維持するには「日本的視点」を克服した「第三者的視点」を取り入れる必要がある。基地使用、事態対処から拡大抑止まで、意外な盲点から安全保障の課題を突く警鐘の書。
目次
第1章 基地使用(日米安保条約と極東;「極東一九〇五年体制」の成立と戦後;「米日・米韓両同盟」の一機能としての日米同盟)
第2章 部隊運用(日米同盟における指揮権;極東の米軍指揮体系と日米指揮権調整)
第3章 事態対処(極東有事への対処;重要影響事態への対処;存在危機事態・武力総攻撃事態への対処)
第4章 出口戦略(戦争終結論の視座―「紛争原因の根本的解決」か「妥協的和平」か;日米同盟側優勢のケース;日米同盟側劣勢のケース)
第5章 拡大抑止(非核三原則と拡大抑止;安保改定と「核密約」;沖縄返還と核密約;日米同盟と核兵器)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mc6ρ助
18
『日本政府と事前に協議しなければならない仕組みがある。・・実際には、事前協議をバイパスできる日米両政府間の「密約」が存在・・日本が事前協議でノーの立場をとってアメリカによる韓国防衛が成立しなければ、結局日本自身の安全も脅かされるだろう。(p11)』ノーと言える可能性が低い事実とノーと言えない「密約」がある現実が同じ地平で比較される。密約、密約と大人の事情な日米同盟、植民地日本とつぶやきたくなる。著者の米国に疑問を抱かない様は子供だとも思うが日本は米国に踊らされてキャンキャン鳴くしか道がなさそうで辛い。2024/08/12
K
17
日米同盟を基地使用、指揮統制、事態対処、出口戦略、拡大抑止という視点から紐解く書。いずれも、日米同盟は米国視点では米韓同盟を含む東アジア地域における安全保障システムの一機能との認識が示され、この指摘は非常に重要。「極東1905年システム」など、外交史を専門とする筆者ならではの歴史的視座が展開される。筆者が批判的に記述する、巻き込まれ論や一国平和主義論など、現代の安保問題に係る日本の世論、メディア論調に警鐘を鳴らす。本書の内容は非常にわかりやすく、論理だてられており、一般読者にも是非推薦したい。2025/03/23
お抹茶
7
川名晋史『在日米軍基地』を先に読むと理解が深まる。日米同盟は二国間同盟としてアメリカの他の同盟網から独立した存在ではなく,アメリカが極東防衛の中心となる米日・米韓同盟の一機能であるという現実が大事。日本政府は日米部隊間での指揮権の共有や移譲は考えていないという立場だが,一国平和主義や必要最小限論による日本的視点だけで決められるものではない。極東有事でのアメリカの軍事行動に対し,事前協議制度を通じて一線を画せるという日本的視点と,アメリカの軍事行動と日本の便宜供与の一体化という第三者的視点にも乖離がある。2024/05/31
バルジ
5
タイトル通り地政学的な軸となる「極東1905年体制」と日米同盟を5つの観点からその相互作用を捉えながら論ずる快著。日本の安全保障論議でとかく見失われがちな「第三者」の視点から日米同盟の死角を炙り出す。最近話題の在日米軍司令官の格上げや中距離ミサイル配備を巡る問題などを見る際に本書は前提となる知識を与えてくれる。日米同盟は米韓同盟と表裏一体。沖縄の「核抜き本土並み」はアメリカの核戦略と国際環境の変化の産物、等多様な論点がちりばめられ充実した読後感である。2024/06/10
小鳥遊 和
4
「おわりに」に掲げられた2ケースが興味深い。ケース1:北朝鮮が韓国との偶発的小競り合いをエスカレートさせ米韓連合軍と戦闘になり、短距離弾道ミサイルを韓国軍・在韓米軍の拠点、日本の排他的経済水域に発射。米軍は在日基地から戦闘行動をとるため日本政府に事前協議を求めたが、日本の一部政党、大手メディアは基地使用拒否の声をあげ(実はこの動きは北朝鮮につけ入られていた)、日本政府の使用許可回答まで時間がかかる。結果、戦闘終息までが長引き、米韓連合軍の死傷者数は想定を超えた(続く)。 2024/08/26