出版社内容情報
184首の名歌と共に語られる、西行の魅力のすべて。「願はくは花の下にて春死なむ」――どうすれば西行のように清々しく生きられるのか。出家の背景、秀歌の創作秘話、漂泊の旅の意味、桜への熱愛、無常を乗り越えた「道」の思想、定家との意外な関係、芭蕉への影響……偉才の知られざる素顔に迫る。西行一筋60年、西行歌集研究の第一人者がその魅力を語り尽くす決定版。
内容説明
184首の名歌と共に語られる、西行の魅力のすべて。「願はくは花の下にて春死なむ」―どうすれば西行のように清々しく生きられるのか。出家の背景、秀歌の創作秘話、漂泊の旅の意味、桜への熱愛、無常を乗り越えた「道」の思想、定家との意外な関係、芭蕉への影響…偉才の知られざる素顔に迫る。西行一筋60年、西行歌集研究の第一人者がその魅力を語り尽くすワンランク上の入門書。
目次
生い立ち
出家
西行と蹴鞠
西行と桜
西行と旅
山里の西行
自然へのまなざし
大峰修行
江口遊女
四国の旅
地獄絵を見て
平家と西行
海洋詩人・西行
鴫立つ沢
西行の知友
神道と西行
円熟
示寂
西行と定家
西行から芭蕉へ
文化史の巨人・西行
著者等紹介
寺澤行忠[テラザワユキタダ]
1942年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。慶應義塾大学助教授・教授を経て、名誉教授。文学博士。専攻は日本文学・日本文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
131
日本史上の文学的知名度で言えば歌人なら西行、俳人なら芭蕉が首位を占めるだろう。両者は武家に生まれながら家を捨て、旅に人生を送りながら優れた歌や句を残したことが共通する。金も名誉も家族も持たず自分の足で歩き続け、漂白の空に芸術を追求した生き方が敬愛されてきた。とりわけ出家した西行は旅路で仏道と歌道の修行を重ね、仏の教えと戦乱の続く世相を詠み込んだ歌に最高の表現を見い出した。彼の歌と生涯の関わりを丁寧に解きほぐし、静謐な心境にたどり着く姿が日本人の心をとらえるのだ。教養と無欲と信仰に生きた「フーテンの寅」か。2024/06/29
trazom
113
184首の名歌とともに、出家、桜、旅、信仰、知友、信仰など、西行の人生と歌とを辿ることのできる味わい深い一冊である。西行というと無常観が強調されるが、むしろ、前向きに生きる一人の人間の姿が見えてくる。秀歌を詠もうという野心ではなく、旅日記や手紙のようにしてスケッチ風に詠まれた歌が多いことにも人間的なものを感じる。出家の事情、待賢門院璋子との関係、江口遊女との応酬などの有名なエピソードに対する見解や、西行と定家を対立的に捉えた小林秀雄さんの西行論に対する論評など、寺澤先生の思いが伝わってくるいい本だと思う。2024/03/27
ここぽぽ
23
古の歌と、修行の日々。今のような光も娯楽もテレビ、スマホもない世界で、したためられた言葉の数々。魂を削って、導き出されたような歌に、美を見極める強かさと確かな生を感じた。旅をよくしていたようで、健脚なんだと思った。とても正直で、心根の深い人なのかなあ。2024/07/15
わたなべよしお
20
評判通りの良本でした。詳しいわけでも専門家でもないが、西行について知りたければ、この本から始めたらよいのではないかと、思えるほどだ。桜を愛し、「道」を極めんとし、旅に暮し、歌を詠む。西行を大好きな日本人が多いことにも頷けた。でも歌自体は定家の方が好きかなぁ。2024/09/03
ceskepivo
18
出家によって西行が目指したのは、仏道修行と作歌修行を通じて、我が身を苦しめる呪縛から自らを放ち、真の精神の自由を獲得することであった。作歌によって自由になる、というのが興味深い。自分の内面を言語化することで、精神が自由になるということか。「世の中を思へばなべている花の 我が身さてもいづちかもせむ」2025/01/05