出版社内容情報
代表作『本居宣長』へと至る、大いなる「思考の冒険」とは? 気楽な随筆に見えた雑誌連載『考へるヒント』は、実は徳川思想史探究の跳躍板だった。モーツァルトやベルクソンを論じていた批評家が、伊藤仁斎や荻生徂徠らに傾倒したのはなぜか。その過程で突き当たった「歴史の穴」とは。ベストセラーを読み直し、人間の知の根源をも探る試みであったことを明らかにする、超刺激的論考。
内容説明
代表作『本居宣長』へと至る、大いなる「思考の冒険」とは?気楽な随筆に見えた雑誌連載『考えるヒント』は、実は徳川思想史探究の跳躍板だった。モーツァルトやベルクソンを論じていた批評家が、伊藤仁斎や荻生徂徠らに傾倒したのはなぜか。その過程で突き当たった「歴史の穴」とは。ベストセラーを読み直し、人間の知の根源をも探る試みであったことを明らかにする、超刺激的論考。
目次
序章 『考えるヒント』について考える
第1章 書物の運命
第2章 科学から歴史へ
第3章 徳川思想史の方へ
第4章 歴史は甦る
第5章 伝統と近代
著者等紹介
苅部直[カルベタダシ]
1965(昭和40)年、東京都生まれ。東京大学法学部教授。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。専門は日本政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
127
小林秀雄の初期の文学や美術論はまだ理解できたが、『本居宣長』を完読しても何が言いたいのかわからなかった。なぜ文芸評論家である小林が徳川思想史研究に没頭するようになったのかを、軽い仕事と見られてきた『考へるヒント』の歴史に関する考察から探究する。近現代を考える上で過去を学ぼうとした時、江戸国学が維新から太平洋戦争までの日本人の精神史に及ぼした影響に気付いた。その源泉たる宣長を考えるうちに、先人と対話する徳川期学知の「沼」にはまってしまったと見る。それは小林だから発見できた、本当の意味で愉しい学問だったのか。2024/01/01
chiro
3
小林秀雄というと我々の世代にとっては大学受験の現代国語で問題に採用される例文としては天声人語に次ぐ頻度で採用される評論家として「考えるヒント」や「様々なる意匠」などを参考書の様に読んだ記憶があるがこの著作で考察されている様な経緯があってそのポジションを確立させてのだという事がわかって興味深かった。「本居宣長」については上梓されたときに話題になっていたのは知っていたがここに記されている事を知って読んでみたいと思った。2024/01/21
zunzun
3
近代日本に初めての文学批評をもたらした男、小林秀雄。彼がなくなってから早四十年の月日が流れた。他の批評家達の名前は白玉楼中の人となってから聞かれないが、小林だけはいまなおその名を残している。『考えるヒント』という著作から「徳川思想の研究」へ向かう小林の問題意識や日本や世界の情勢を描き、なぜ小林秀雄は『本居宣長』をかかねばならなかったのかを炙り出す。博学審問な本である。著者の苅部はこれまで小林秀雄を読み込んだことはなかったようだが、その読解は嘗て小林の愛読者であった私にとっても啓培として益があった。2023/10/27