出版社内容情報
私たちは「寿命がない種」から「ある種」になった。死と進化はどんな関係にあるのか。4つの仮説を通して、地球の生命誌をひもとく。
内容説明
およそ40億年前に誕生した初期の生物に、寿命はなかった。それにもかかわらず、死ぬことは必要だった―生物は進化し、多様性を生み出し、複雑な構造体となったからだ。生物は生き残るため、皮肉なことに「寿命」を得たのである。「死」に関する4つの仮説の歴史的な盛衰を通して、生物の「寿命」がどのように生まれたのかをひもといていく。
目次
第1章 自然淘汰的死亡説
第2章 生物の基本形は不死
第3章 種の保存説
第4章 利他行動による死
第5章 進化論的寿命説と生命活動速度論
第6章 複雑なものの死
著者等紹介
更科功[サラシナイサオ]
1961年、東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。民間企業を経て大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は分子古生物学。現在、武蔵野美術大学教授、東京大学非常勤講師。『化石の分子生物学―生命進化の謎を解く』(講談社現代新書)で、第29回講談社科学出版賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
107
ヒトがなぜ死ぬのかについて、従来の「種の保存説」「生命活動速度論」「進化論的寿命説」に加え、「自然淘汰的死亡説(自然淘汰が死ぬ数を節約した結果、多様な進化が実現)」を論じる。私の読解力が足りないのだろう、著者が何をおっしゃりたいのか、よくわからない。更科先生の本は、ユニークな視点でとても勉強になるが、今回は、特に晦渋度が高い。老化や寿命に関する生物学的な考察では、テロメア短縮の説明が一般的だが、一切言及されない。本書は、死のメカニズムを論じるのではなく、「なぜ死ぬ運命か」を論じる哲学ということなのだろう。2022/07/22
榊原 香織
76
面白かった。 純粋に生物学的見方から。感傷、哲学なし。この方、例がおもしろい(よくわからないのもあるけど)。AnAgeという生物の寿命データベースがあるのだけれど、ガラスカイメン、寿命1万5000年、がチャンピオンだろうな2022/09/22
bapaksejahtera
18
著者の本の多くは生物の進化を中心とする。本書もこれに連なるのだが、表題に対して提示する4つの話題①自然淘汰説②種の保存説③生命活動速度論④進化論的寿命説のうち、寿命が設定されてる我ら多細胞生物に遍くある「死」の機能説明は①で尽きており、その他は各論記述に過ぎず表題への違和感が否めない。但し本書は死と寿命を主題に、生物学の新たな諸問題を包括的に説明している点で貴重である。特に古い生物学の基礎知識しかない私には、原核真核生物の他に設けられたアーキアすら目新しいし、エピジェネティクスの機作については目を瞠いた。2023/08/10
J
7
★★★☆☆ 前半少し眠くなったが、4章から面白くなった。既に聞いたことある話が多かった気がするが。ミツバチの世界は改めてすごいなぁと思う。この手の興味深い話はやはり、利己的な遺伝子を読んだ時の印象が一番強く残っている。いつか再読したいと思いつつあの厚さを前にして後回し…2023/04/10
マイアミ
6
★★★ 自然淘汰と種の保存、単細胞生物と多細胞生物の死の違い、進化論的死など良く言えば割りと幅のある生物学の学術書のような感じだが、悪く言うとまとまりがなくテーマが欠けているような内容だった。先生結局何が言いたかったんですかと問わずにはいられないが、おそらくは自然淘汰について語りたかったのではないかと推測される。2022/07/09