出版社内容情報
グローバリズムとAIが、国民国家と巨大企業と中央銀行のバランスを突き崩し、中間層を解体する。その戦慄のメカニズムを読みとく。
内容説明
なぜ「中間層」がますます貧しくなるのか?19世紀に誕生した国民国家・株式会社・中央銀行の3点セット。しかし、資本移動を伴うグローバリズムと、AIやブロックチェーン等のデジタライゼーションが、3者のバランスを突き崩し、中間層を蝕み始めた。超低金利、株主優遇、財政赤字、法人税引き下げ競争、GAFA、リブラ、MMT…悪循環に陥った資本主義の行方を、日銀出身の異才が読みとく。
目次
第1章 それらは一九世紀に出そろった
第2章 グローバリズムと分岐した世界
第3章 競争の海に落ちる国家たち
第4章 人々の心に入り込む企業たち
第5章 漂流する通貨たち
第6章 地獄への道は善意で敷き詰められている
著者等紹介
岩村充[イワムラミツル]
1950年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。日本銀行企画局兼信用機構局参事を経て、1998年より早稲田大学教授(現職は早稲田大学大学院経営管理研究科教授)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鬼山とんぼ
7
歴史、経済史を概観した上で、現在我々が見ている国家、企業、通貨の成立と危うさを鋭く抉っている。扱う範囲は幅広く、大学の講義録のような趣きも。特に後半の税制やデジタル化時代の個人情報保護に対する指摘は出色だと思った。この年齢の著者としては最近のトピックに対してもよくフォローされており、頷ける指摘が多かった。慢性的金融緩和のせいで金融政策がうまく行っていない現状や、暗号資産の膨張を踏まえれば、サブタイトルは鮮度が落ちてきたグローバリズムより、5章「漂流する通貨たち」から採ってもよかったかもしれない。2021/11/23
しんさん
6
現代社会を構成する3点セット(国民国家、株式会社、中央銀行)から、ピケティ、仮想通貨、MMTまでふれられていて、とても面白いのだけど理解しきれずもやもやが残る。一番衝撃的だったのは三島由紀夫の「宴のあと」の大臣を国家、女将を企業、選挙参謀を通貨をたとえたコラムで、さらにわかったようなわからないような気持ちになった。出直してきます。2022/10/05
読み人
6
<図書館本>難しかったです。図書館が閉鎖される前に借りたのでかなり長く手元にあります。じっくり考えつつ読む為に購入を検討しています。2020/05/21
しおり
5
アジアと西欧を比べた時、大航海時代までは一人当たりの豊かさに大きな差はなかった。しかし、原料の生産地と製品の加工地が分離していくにつれ豊かさに差ができ、固定化していった。ビットコイン辺りの話は難しくて分からなかった。私有財産を保護する国民国家に有限責任によって投資を容易にした企業、決済と納税インフラを整えた中央銀行の三つが経済の急拡大を支えた。右肩上がりのころは良かったが、すべてが自由に動くグローバル下では底辺への競争が始まり富裕層の顔色を見ることに。レミングの輪廻のコラムが空恐ろしかった。2023/11/25
okadaisuk8
5
博覧強記の識者による著作。形成された国民国家がグローバル化で、税率の値引き競争に追われ、GAFAなど巨大企業が「人々の関心争奪戦」において国家を超えうる存在感を示している中、単に低金利政策を続ける中銀に存在価値はあるのか…と考察する。ピケティの有名な「r>g」を増長させているのが中銀の低金利策だという指摘はなるほどと思いました。脇道コラムも面白いが、ちょっと煩雑すぎるので、飛ばして読んで後でまとめて読んだ方がリズム良く本文を読めるかもしれない。2022/08/27