内容説明
トリロー以前には何もなかった―。終戦直後にNHKへ歌とコントを持ち込み、「ヘタクソな演奏だが、アイデアは抜群」と評されて採用、やがて始まったラジオ『日曜娯楽版』を“戦後の自由”が横溢する伝説的お化け番組にする。経済成長と共に、CMやTV製作などさらに活動の場を広げていくが…。名のみ高く、実像が知られていなかった謎の傑物、初の評伝!
目次
ビルの街にガオー
アスパラでやりぬこう!
ジンジン仁丹
CMソング第1号誕生
1950年の特急阿房列車
雷とアプレゲール
1946年、ラジオデビュー
フランク馬場がやってきた
日曜娯楽版とサザエさん
アスパラガスの音楽
素晴らしき音楽仲間
軍友・五島昇と「江守家」
「フラフラ節」と吉田茂
波乱の1954年
メイコちゃんの「田舎のバス」
ディズニーと浅沼稲次郎
トリローグループの殺人事件
1964年の殺人事件
長生きしたけりゃチョチョンノパ
著者等紹介
泉麻人[イズミアサト]
1956(昭和31)年、東京生れ。慶応義塾大学商学部卒業後、東京ニュース通信社に入社。「週刊TVガイド」「ビデオコレクション」の編集者を経てフリーに。東京や昭和、サブカルチャー、街歩き、バス旅などをテーマにしたエッセイを発表する一方、テレビにも出演しコメンテーター、司会等を務める。“天気予報好き”が高じて気象予報士の資格を取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
258
今なお残るCMの傑作、「くしゃみ3回、ルル3錠」(元・三共製薬)「ワ、ワ、ワ、ワが3つ」(ミツワ石鹸)などCMソング制作の元祖・三木鶏郎の初の評伝。中でも、音を重ねてリズムを作る、仁丹の「ジン、ジン、ジンタン」の制作過程が面白かった。著者・泉麻人によれば、映画「君の名は。」でヒットを飛ばしたRADWIMPSの歌詞「ゼン、ゼン、前世から~」も、この系譜をなぞっている、との指摘が秀逸。しかし、私にとって本文の登場人物になじみが薄く興味を引かない部分が多くて、他は期待外れだった。2022/12/21
bapaksejahtera
16
戦後のラジオとテレビ初期に活躍した鶏郎の評伝は案外少ない。本書は本格的な物とされている由。文中でも鶏郎が先輩文士からアプレゲール扱いされた様子が描かれているが、泉も新人類として世に出て、本書の取材で野坂昭如辺りから拒否反応された様子が述べられている。周り合わせが面白い。思えば泉も既に70歳近く、我乍ら愕然とする。本書は生い立ちから順に述べるのではなく、野坂や永六輔キノトール等のラジオ時代の謂わば弟子筋の一群、河合坊茶のり平中村メイコ千葉信男等の芸能仲間交遊録で構成され、纏まりがある。参考文献は利用できる。2025/03/16
Roko
9
子供の頃、ラジオやTVで三木鶏郎の曲を聞かない日はありませんでした。どれだけたくさん作ったんだろう?って思うくらい。今思い出せるだけでも、「ジンジン仁丹、ジンタカタッタッター」「船橋ヘルスセンター」「ワワワ、輪が3つ、ミツワ石鹸」「牛乳石鹸、良い石鹸」「くしゃみ3回、ルル3錠」「サンヨー・カラーテレビ」「江崎グリコ」などなど。今でも歌える曲がたくさんあります。面白い音楽、コント、日本のそういうジャンルのすべての原型を作った三木さんのことを、これだけ調べつくした泉さんの熱意は大したものだと思います。2019/11/10
ほたぴょん
6
戦後、ラジオなどを舞台に世を席巻した三木鶏郎だが、僕も名前くらいは知っている程度で、演者としても活動していたこと、永六輔や野坂昭如、三木のり平らの師匠格だったことなどは全然知らなかった。サブカルチャーというのは後になると系統が見えにくいところがある。そう言われれば、三木のり平の桃屋のCM、「受験生 夜食の時間も 共通一時(ごはんですよ)」なんていうのはトリローの超ショートコントそのままだなあ。都会的で洗練されたコント・芸能の戦後における祖なのだろうと考えると、泉麻人とトリローの親近性もわかる気がした。2022/12/06
ワンタン
6
レコードコレクターズを読むような大学生となって、CM音楽の巨匠ミキトリローという名前を初めて知った。子どもの頃ソノシート(!)で聞いた鉄人28号の主題歌の作者だということも知り、意識するようになった。この本は、丹念に三木鶏郎の足跡をたどった労作。泉麻人って新聞や雑誌のコラムでしか知らなかったが、こんな地道な仕事もする人だったんですね。混沌としていい加減な、しかし活気にあふれた、戦中から戦後にかけての日本の世相が様々なエピソードからうかがえて興味深かった。音楽的な分析がもっとあれば、更によかったのだが。2019/10/07
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- 和書
- 危機の新聞 瀬戸際の記者