内容説明
人はなぜ、後半生になると重荷を下ろしたくなるのか。西行、親鸞、芭蕉、良寛に共通することは、人生の折返し点を過ぎ、歌や句にますます傾倒していったことだ。肩にのしかかった責務や思想、人間関係などから解き放され、旅に出て「うた」をつくった。孤独を楽しみ、軽やかな自由の世界にあそんだ。そろそろ私たちも、「ねばならない」生き方から少しずつ解放されようではないか。
目次
序章 存在の重さと軽さ(消化器系と循環器系;思想という重さ ほか)
第1章 西行の旅姿(マイルドな家出;西行の林住期 ほか)
第2章 親鸞の変容(親鸞と法然;三つの期 ほか)
第3章 芭蕉の乞食願望(「軽み」の境涯;西行と同じ「筋」 ほか)
第4章 良寛遁走(俗にあらず、沙門にあらず;芭蕉め、と良寛も ほか)
著者等紹介
山折哲雄[ヤマオリテツオ]
宗教学者、評論家。1931(昭和6)年、サンフランシスコ生まれ。1954年、東北大学インド哲学科卒業。国際日本文化研究センター名誉教授(元所長)、国立歴史民俗博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kazehikanai
12
2,000年以上も前のインドの賢者が唱えた「四住期」、「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」。その「林住期」を、旅の空の西行、親鸞、芭蕉、良寛に見る。そこには4人に通じる僧でも俗でもない、変容がある。この見方自体はあくまで著者による想像のもので、事実は異なるかもしれない。おそらく異なるだろう。ただ、この本には88歳の著者だからこその諦観を含んだ達観があり、それが「身軽」になるということ。「つひに無能無芸にして、ただこの一筋につながる」(『笈の小文』松尾芭蕉)、人生の極致なのかもしれない。2019/11/24
coldsurgeon
6
古代インドでは、人生の4段階を想定して、学生期、家住期、林住期、遊行期と名付けた。その林住期は一時的に家を出て、ひとりになって自由な時間を楽しみ生きる時期だ。その林住期を体現したとする西行、親鸞、芭蕉、良寛を順にあげて、重荷を背負ったまま人生を終えるのではなく、身軽になって、解放されて生きることを提案している。しがらみをすべて捨てることが出来るわけはないが、少しでも軽みを漂わせることが出来ればよいか。2022/05/18
良さん
4
古代インドの老賢者が発見した人生の第三ステージ「林住期」について、これが日本人の生き方にもあったとする。 【心に残った言葉】四つの人生段階とは…学生期・家住期・林住期・遊行期(34頁)/西行という存在と親鸞の運命を同時に考えようとする時、「鎌倉」という言葉は要らない。…同じように、親鸞と芭蕉・良寛を並べて想像をめぐらすとき、「江戸」という言葉は障害にこそなれ、有効であるとはとても思えない。(42頁)2019/08/20
akanishi
0
まあ何というか著者の妄想、幻覚を記したもので、読み手としては、困る、というところだろうか。読書中は楽しかったけれども。2020/10/22
Nekotch
0
ふわふわと、時の流れのなかを漂うような本。TO DOリストに加えたい、「マイルドな家出」。2020/05/30