出版社内容情報
元農商務省官僚「柳田國男」が目指した健全な農業経営。が、その理想は葬り去られた。近代農業の闇を暴き、柳田を再評価する問題作。
内容説明
かつて農商務省の官僚だった柳田國男は日本の農業の弱点を見抜き、改善策を次々打ち出した。が、その思いは時の体制に葬られ、志を継ぐ後輩たちも、やがて忘れ去られた。国際競争力はおろか、高い関税で命脈を保たれる今日の農業。近現代を貫いて横たわる農政の病とは何か?柳田が見出した希望の策を現代に蘇らせる。
目次
第1章 柳田國男が見た日本の農業
第2章 理想主義的農業の挫折と明治農法
第3章 地主制が要求した高米価と小農
第4章 柳田國男の登場―日本経済思想史上の一つの奇跡
第5章 柳田國男の具体策
第6章 柳田農政学を継ぐ官僚たちの戦い
第7章 農林官僚による地主制打倒
第8章 地主制から農協制へ
第9章 理想的農政の敗北
第10章 農業を壊すもの
第11章 蘇る柳田農政学
著者等紹介
山下一仁[ヤマシタカズヒト]
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所上席研究員。1955年岡山県生まれ。1977年東京大学法学部卒業、同年農林省入省。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、同局次長などを歴任。2008年農林水産省退職。1982年ミシガン大学応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんがく
14
民俗学者として著名な柳田の、官僚時代の農政論にスポットライトを当てた本。著者も元農政官僚である。戦前の寄生地主制に対し、中農主義を掲げた柳田の論を紹介するとともに、農地改革後は地主に代わって農協が農村を支配するようになったと痛烈に批判。葬り去られた柳田の農政改革論を今こそ採用し、高関税、減反、農協に大きく影響される日本の農業を大きく変えるべきであると提言。今まで触れてこなかった分野であるが、日本社会や政治との関係の中から農業について深く知ることが出来て良かった。2020/05/05
うえ
8
「柳田の数々の農政に対する思想、主張は、柳田や新渡戸が主宰する郷土会の若手メンバーである農政官僚、石黒忠篤に受け継がれ、戦前の農林省の主流な思想に発展していった。石黒が小作問題に関心を持つようになったのは、1907年に水田の小作料物納制についての柳田の講演を聞いたことがきっかけだった…石黒が取り組んだ大きな問題は、小作人の解放と農業恐慌対策である。石黒は昭和初期の農業恐慌に対処するため農山漁村経済更正運動を事務次官として指揮している。これは9年間にも及び、農政史上農地改革とならび称される農政運動となった」2021/03/19
takao
1
ふむ2024/10/21