出版社内容情報
ミラノに生まれ、ローマで名を成すも、殺人の罪で逃亡生活を余儀なくされたバロック絵画の巨匠。その波乱の生涯を辿りつつ、作品を追って旅する。
内容説明
17世紀初頭のローマで、一世を風靡したバロック絵画の巨匠カラヴァッジョ。斬新な明暗法を駆使した写実的かつ幻視的な作品は常に賛否両論を巻き起こし、さらには生来の激しい気性から殺人を犯し、逃亡生活を余儀なくされる。聖なる画家にして非道な犯罪者。その光と闇に包まれた生涯を辿りつつ、現地に遺された作品を追って旅する。
目次
聖と俗のはざまで
01 生誕の地ロンバルディア
02 豊穣のローマ
03 南への逃亡
04 シチリア放浪から、死出の旅へ
著者等紹介
宮下規久朗[ミヤシタキクロウ]
1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院人文科学研究科修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科准教授、美術史家。著書に『カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞・地中海学会ヘレンド賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
255
ダ・ヴィンチやミケランジェロ等のルネッサンス絵画は、それぞれに個性的でありながらも、どこかまだ天上的だ。ところが、バロックのカラヴァッジョに至ると、そこに強烈なまでの個性が横溢する。宗教画においてさえそうである。そもそも、カラヴァッジョほど実人生において、およそ聖なるものから遠い画家も珍しい。それでいて、教会の壁面を飾る彼の絵は、聖なるドラマの躍動感に溢れている。サンタゴスティーノ聖堂の「ロレートの聖母」に見られる聖母子とその前に跪く2人の貧しい農民。それはまた、光と闇の対比として見る者に迫ってくる。2013/03/26
れみ
88
イタリアの画家カラヴァッジョの生涯を作品が描かれ残された場とともに巡る本。画家として名声を得ながらも様々な揉め事が絶えず殺人まで犯し各地を転々とする日々を送ったカラヴァッジョ。亡くなったのが38歳ってずいぶん早いしもっと長く生きてたくさん作品を残した可能性もあるけど、この人の気性などからすると、長生きするところがなんだか想像できない気もする^^;カラヴァッジョ展で見た作品もたくさん載っていたので復習になって良かったけど見に行く前に読みたかったかも。2016/05/17
マエダ
37
犯罪者にして天才画家カラヴァッジョ。Theヨーロッパの絵という感じがする。2022/09/14
zirou1984
37
カラヴァッジョの生涯を追いかけるように著者自身がイタリア各地を辿り、彼の作品を展示している美術館や関連する作品を紹介していく文字通りの巡礼記。中には聖堂や礼拝堂に描かれたものも存在するため、その地に向かわなければ目にすることのできない作品の数々がフルカラーで紹介されているのがまずはありがたい。文章による紹介も簡潔ながらカラヴァッジョの魅力を抑えた内容で、入門としては最適なものとなっている。作品も年代順ではなく場所別にまとめられており、イタリアの地を踏む時にはぜひ本書を携えておきたいと思える一冊。2016/04/02
紅香
35
犯罪者にして天才。逃亡しながら神聖な絵を描き続け、時折自分自身も登場させてたカラヴァッジョ。獰猛さと静寂さ、高圧さと臆病さ、その危ういバランスに魅了される。こうしてあるべききらびやかな場所で絵を観ると、抗えない、逃れられない魂の苦悩さが際立つ。悪事を働くのは、偉業を認めて貰いたいのは、神に振り向いてほしいから、受け入れてほしいから。そんな祈りが見える。13歳で両親を亡くした彼のミューズは聖母マリアだったのではないかと勝手に想像する。現地でもし観ることができるなら、もっと雄弁に語りかけてくれそうな気がする。2015/07/25