内容説明
冬の山中、腰巻一丁で煙草をふかす。この怪しげな男こそ、紀州和歌山が生んだ先駆的エコロジスト、南方熊楠(一八六七‐一九四一)。和歌山県田辺市近郊の林の中で撮影された熊楠42歳の姿である。博物学者として、また生物学者、民俗学者として広く知られる熊楠にとって、研究対象は粘菌、キノコ、藻、昆虫から男色、刺青、性、夢まで、この世あの世のすべて。世界を放浪、原生林を駈け巡り、果て無き大宇宙の謎を追い、森羅万象の本質に迫るため、生涯その目で見たままを詳細に記述しまくった。本書は、奇才が遺した膨大で不思議な資料を大公開。その頭脳と心の森に踏み込み、最新の研究に基づく熊楠像を紹介する。
目次
1 海外から那智、田辺へ(博物学への関心;海外への眼;アメリカ ほか)
2 森の生命の世界へ(粘菌;きのこ;藻類、地衣類 ほか)
3 内的宇宙へ(病の自覚;夢への関心;身体への関心 ほか)
クマグスの熊野へ行こう
著者等紹介
松居竜五[マツイリュウゴ]
1964年、京都府生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。学術修士。東京大学教養学部留学生担当講師、ケンブリッジ大学客員研究員、駿河台大学助教授を経て、龍谷大学国際文化学部准教授、南方熊楠顕彰会理事、日本国際文化学会常任理事、熊楠関西研究会事務局(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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トムトム
22
だれも追いつけない大天才!全ての資料、お手紙をご家族が大切に保管していたことがすごいと思います。膨大な量です。それが今でも学術的に価値があるし、単純に眺めていて綺麗。若い頃の熊楠、ちょっとキュートね♡2020/01/18
えも
21
今年一発目はクマグス。「太陽」みたいに多くの写真と文で構成されている、初心者向けの紹介本です。2025/01/03
石油監査人
15
この本は、明治から昭和にかけて活躍した博物学者の南方熊楠の生涯を解説したものです。本の著者は、比較文化研究家で、熊楠の研究者でもある龍谷大学教授の松居竜五氏です。熊楠に関する本としては珍しく、要点を押さえながら簡潔にまとめられており、全ての頁に美しい写真が掲載されているので、親しみやすい入門書となっています。知の巨人である熊楠を理解することは難しいのですが、熊野や那智などゆかりの地を旅して、近くに感じることは出来るはずなので、いつか、そんな旅をしながら、また、この本を読んでみたいと思わせる一冊です。2020/09/07
ぐうぐう
12
まさしく巨人としての熊楠を堪能できる1冊。粘菌類や藻類、民俗学からやがては曼荼羅の世界へと、熊楠の興味関心は深く濃く拡散していく。サンフランシスコからミシガン、フロリダ、キューバ、そしてロンドンでの生活を経て、終の棲み処に選んだのは、紀伊半島は田辺。自然あるところ、熊楠にとっては果てのない宇宙そのものだったのだろう。2009/05/22
KAZUKI
11
ここまで執念深く(良い意味で)行動を起こし、どんなに大変なことがあろうと自分を貫き通す人は中々居ないでしょう。 南方熊楠さんの素晴らしさに触れることが出来る一冊です。 そして良い刺激を受け、自分も無理なく頑張ろうという気持ちにもなりました。2015/04/17