感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
369
ユトリロが画家として活動したのは20世紀の前半。かれこれ100年前である。実生活ではアルコールに溺れ、デカダンな人生を送っていたようだが、絵はむしろ愚直でさえある。ややもすると素人画家に見えかねないくらいに。彼が最も愛したパリの風景はモンマルトル界隈であり、絵もまた多くを残している。幸いにして今もモンマルトルでユトリロの描いたそのままの通りや階段を目にすることができる。ただ、彼の描くモンマルトルの光景はいずれも寂しく、画家の心象の孤独が滲み出るようだ。2021/10/23
reading
15
ユトリロの画風が好きでユトリロ展に行った。会場の関係図を見て、彼の不遇な人生を知り、この本を読んだ。私生児として生まれたユトリロは奔放な母からは愛情を受けることができず、少年のころからアルコールに依存する生活を強いられる。精神病院で治療の一環として絵筆を握ることとなったユトリロは次第に絵の世界で頭角を表していく。しかし、アルコールを伴う生活を変えることはできず、寂莫とした人生を送る。このような状況の中、皮肉にも独自の白の時代を生み出した。芸術家の人生にも思いを馳せると作品をより深く鑑賞することができる。2023/11/19
二藍
12
『ペンキや』に出てくる《ユトリロの白》というのがずっと気になっていて、ようやく手を伸ばした一冊。たくさんの作品がカラーで載っていたのも嬉しかったし、解説文も面白かった。いろんな色が混じり合っているけど白は白、という不思議な壁の色。アルコールと絵に生きたユトリロの生涯を知ると、酩酊のなかにどんな風景を見ていたのか考えさせられる。ずっと見ていたい白だと思った。2014/01/21
羊の国のひつじ
11
「ユトリロの生涯には絵とアルコールしかないと書いても良いくらいなのだ。ただ、アルコールの酔いが何であるかを知っている人だけが、そこに隠されたドラマを感じ取るはずだ。」ユトリロ展に行きたい。たまらなく好き。2017/03/27
ろべると
7
モンマルトルを中心にパリの街並みを描いたユトリロだが、私生児として生まれたその生涯は波瀾に満ちたものだった。アルコールに溺れた極貧の時代を経て、晩年は国民的画家として名声を得たユトリロ。彼の絵は独創的な芸術性は高いとは言えないが、そこに住んでいた人達の空気感を肌で感じることができる。一世紀を経た現在の風景と比較するのも楽しい。これは、ユトリロと同時代を生きたアジェの風景写真にも通じるものがある。と思ったら本書の巻末ではアジェとその写真も紹介している。ユトリロはアジェの写真をモデルに描いた絵もあるらしい。2021/09/25
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