敵

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  • サイズ B6判/ページ数 311p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784106006623
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0393

内容説明

渡辺儀助75歳。その脳髄に敵が宿る。「恍惚」の予感が元大学教授を脅かす。意識が残酷なまでに崩れていく…。筒井文学の達成を示す書下ろし長編。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mike

79
渡辺儀助75歳。元大学教授。妻を亡くし一人暮らし。ルーティンに従って毎日堅実に過ごす。人にも食にも好き嫌いが激しくプライドが高く意固地。性欲が強く今でも自慰に励む。目下の関心はいつ死ぬか。持ち金と日用品を使い果たして綺麗に静かに逝きたいと考えている…不思議な本で、筒井さんの小説なのに、まるで実在の儀助のエッセイ(途中から日記)を読んでる気になる。最初は彼の日常と過去が明確なのだが、やがて夢になり妄想になり、夢と現実、妄想と真実の境が無くなっていき迎えるラスト…長塚京三の映画も興味深いので観てみよう。2025/01/22

keroppi

72
NHK「100分de筒井康隆」を見て筒井康隆を読みたくなった。「敵」の映画がまもなく公開されるので蔵書から引っ張り出して読んだ。1998年の刊行だから27年前の作品。その頃は、この作品の意味を十分理解出来ていなかったと思う。今、この主人公の儀助の年齢と近くなって読むと、この小説に描かれていることがじわじわと押し寄せてくる。年をとるということの充実、喜び、寂しさ、悲しさ、そして怖さ。平穏に過ごしている日々に「敵」はやってくる。やはり、筒井康隆は凄い。これが出版された時、筒井康隆はまだ64歳か。映画も観たい。2025/01/11

カタコッタ

15
公共図書館に所蔵があって幸運だった。映画化されただけで久しく読まれていなかったであろう資料が予約を待ってでも読まれる事もまた幸運である。短い物語が淡々と続き、妻に先立たれた元大学教授の生活がどの様なものか明かされる。拘りが有る様で実はこれまでの生活が変われないだけで金の心配もする。老齢には逆らえず脳内では妄想が絶えない。好きなように生きながらも孤独。映画は見ていないが長塚京三が主人公だそうだが、ぴったりだ。心に残る読書となった。2025/03/21

ぽち

14
たぶん三度目の再読になるのだけど、これまでこの作品のどこが好きだったのかと言えば前半のグルメ小説的な部分で、川上弘美さんの諸作にも言えることなのだけど食べ物がおいしそうな小説というのは読んでいてほんとうにとても楽しい。今回の読書もそのへんはもちろん楽しめたのだけど、タイトルにもなっている「敵」が蠢きだす件、当時はインターネット以前のパソコン通信の時代だった訳だけど、いま読むとこれはまさしく「作家は炭鉱のカナリアである」を地で行っている、なんだかその現場に居合わせた当事者の気持ちにもなってくる。2018/02/03

アキ

12
残り少なく限りのある生を前にして、老醜を晒すまいと決意した元大学教授渡辺儀助75歳。その日々を綴る300ページ近くは、最後の数ページ、そのためのもの。まるで、生きるすべては死と向き合うその時のためのものに過ぎない、とでも言うように。四十九日もまだの母の本棚からの一冊。筒井康隆作品を貪り読んだのは大学生の頃の私で、母の蔵書にはこれまでなかったはず。また、読むべくして読んだ(?)そんな不思議な思いと『純文学』作品だったのを忘れて読んでいたり、寂寥感に沈む結末が、今の自分には忘れることのない印象を残す。2020/11/12

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