内容説明
関東、関西、手形、切手、自由、自然などの言葉を通して、「多様な日本社会」の歴史と文化をわかりやすく語ります。
目次
1 「日本」という国名
2 列島の多様な地域
3 地域名の誕生
4 「普通の人々」の呼称
5 誤解された「百姓」
6 不自由民と職能民
7 被差別民の呼称
8 商業用語について
9 日常用語の中から
10 あとがき
著者等紹介
網野善彦[アミノヨシヒコ]
歴史家。1928年、山梨県生まれ。東京大学文学部卒業。日本常民文化研究所研究員、都立北園高校教諭、名古屋大学文学部助教授、神奈川大学短期大学部教授、同大学経済学部特任教授を務めた。専門は日本中世史、日本海民史。著書に『日本中世の非農業民と天皇』(岩波書店)『無縁・公界・楽』(平凡社)『蒙古襲来』(小学館)『日本の歴史をよみなおす正・続』(筑摩書房)『日本社会の歴史上・中・下』(岩波新書)『古文書返却の旅』(中公新書)『「日本」とは何か』(講談社)他多数
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
花林糖
14
(図書館本)読友さんの感想から。読みやすく面白かったけれど、前半はかなり引っかかる箇所があったのが残念。「誤解された「百姓」」が一番興味深く、「商業用語について」「日常用語の中から」も面白かった。2016/06/17
かんがく
12
日本、百姓、被差別民など「あたりまえ」とされている概念を、史料の分析を通してその「あたりまえ」から解放していく様は見事。中世社会の自由で多様な姿が活き活きと見えてくる。歴史分析と叙述の方法としてとても参考になった。言葉に対する丁寧な接し方も参考にしていきたい。2021/04/28
いさらこ
7
初読。新潮100。ふだん何気なく使っている言葉の成り立ちなど面白かった。東日本・西日本での被差別民への感覚の違いがそもそも「ケガレ」の考え方の違いというのが面白い。本来の『百姓』なども納得だけど、少し百姓について繰り返し過ぎな気もした。しかしながら、史料を読み解く際に言葉の意味を考える必要があるのは再認識。とはいえ、注釈のない史料を読むことなんて、今後の人生ではなさそうだけれど。日常生活を送る上では「本来の意味はこうだから」などとは言わないし、言葉の変化に目くじらを立て過ぎないようにしたいと逆に思ったり。2014/09/26
sansirou
6
日本という国の名前が決まったのは何世紀か?という問いから始まって、日本の範囲、地名、人民の呼称から、「百姓」とは何か、職能民と被差別民、最後は商業用語から日常用語まで、歴史と言葉について考察するとてもとても面白く、勉強になる本です。2021/11/23
nizimasu
6
網野先生の本をきちんと読んだのは初めて。元が講演をまとめたものなので読みやすい。その通低するメッセージというのは日本語の本来の意味を当時の歴史背景に置き換えて読むということ。当時にタイムスリップするような感覚が必要だということ。そう考えると日本という国家の成立も丹念に読みしかもその時代が必ずしも日本全域に支配が及んでいないといった指摘や関東と関西の違いなんかも平将門のエピソードなどを交えていくと実に生き生きとしていく。どうしても為政者の作った歴史に依拠しがちだが日本語の歴史こそ真の日本史なのかもしれない2015/12/05