内容説明
夏目漱石、その人生の深淵。『虞美人草』『三四郎』『門』…朝日新聞小説記者となった漱石の実像とは何か。「修善寺の大患」を挟む、明治四十年から天皇崩御までの夏目漱石を、作品という一等資料を味読し尽くして描く、評伝文学の最高峰。
目次
「寒」い漱石
「功利的にて無責任」
「杜鵑厠なかばに…」
文名の翳り
早稲田南町
二葉亭の挑戦
「暗い所」への下降
虚子と藤村の間
夢中の夢
猫の死〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gen Kato
1
家庭的に不遇だった才あり学ある青年が満たされるには、公に名を成すことしかない。それとて彼を芯から幸福にはしない。その状況は現在も変わらぬにしろ、明治という時代の中ではさらに生きにくかったのではなかろうか。江藤淳の漱石を見る目も、青年に向けてのそれのように感じる。2015/04/08
讃壽鐵朗
0
江藤淳は文芸評論家ではあるが、一方明治時代の政治、人物等に関する著作も多い。この二つの要素が上手くかみ合って、正に題名「漱石とその時代」が物語るように、漱石の生き様及び作品の評論とその時代の動きが並列的に述べられている。つまり、読者は漱石の人物、作品を理解すると共に、明治という時代の流れをもくみ取ることが出来るわけである。ただし、一般の読者には文芸評論的な部分はかなり難解である。