内容説明
「高校三年生」や「愛と死をみつめて」をつらぬく昭和30年代の時代精神とは何か。人生論や若い女性の手記、教科書に採用された漱石の「こころ」や石坂洋次郎の文学を精緻に読み解きながら、高度成長期の青春と性の風景を描く。
目次
プロローグ 波勝岬慕情
1 『愛と死をみつめて』―昭和三十年代の細密画
2 人生論の季節―武者小路・亀井・堀
3 甦る「こころ」―友情と恋愛をめぐるテキスト
4 石坂洋次郎のために―奇蹟の四年間
5 「忍ぶ川」と『忍ぶ川』のたくらみ―変貌し続ける読み
6 手記を書く女たち―『二十歳の原点』から振り返る
エピローグ 「高校三年生」―ひとつの時代の終わり
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆに
1
戦後まもなく秩序維持の意味で始まった「純潔教育」が形骸化し、高度経済成長期の物質至上主義が浸透し始めた1960年代において、「純潔」「純愛」というイデオロギーに人々がどのように向き合ったかを、主に歌謡曲やテレビドラマ、女性たちの手記や日記など、いわゆる文学プロパーではないジャンルから探った著作。「昭和三十年代」とあるものの、要は1960年代的話。サブタイトルも「1960年代」とすればよかったのに…年号表記も、昭和だとわかりづらい。そのへん、1994年の本だなあと感じる。いや、私の感覚の問題か?2016/08/06