内容説明
ドストエフスキー最後の、未完の大作に秘められた謎をスリリングに解き明かす。大反響をよんだ『謎とき「罪と罰」』に続く第二弾。
目次
1 “カラマーゾフ”という姓
2 黒いキリスト
3 好色な人たち
4 巡礼歌の旋律
5 薔薇と騎士
6 3と13の間
7 “蛇の季節”のなかで
8 白いキリスト
9 臆病なユダ
10 兄弟愛の表裏
11 心の広さと大きさと
12 実現しなかった奇跡
13 逆ユートピア幻想
14 実在する悪魔
15 “カラマーゾフ万歳!”
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
59
『カラマーゾフ』読了記念に。方言やロシアの民間信仰、宗派についてなど一介の読者には目配りできない部分の指摘もあり勉強になりました。興味深かったのが、イワンとスメルジャコフの関係の逆転劇が、農奴制の廃止を経た当時の「ロシアが体験していた『過渡期』の本質のもっともリアリスチックな表現」だったという指摘。これには物語の普遍的な側面を追うばかりで時代背景などに思いを致さなかった自分の読みの浅さを反省させられました。そのほかゲーテやヴォルテールの影響についてなど、『カラマーゾフ』の世界を深めてくれる楽しい本でした。2020/07/29
zirou1984
47
びっくりするぐらい面白い。キリスト教、特に新約聖書との対比や『白痴』から続く聖痴愚である登場人物、ロシア語の意味やその語源に至る考察といった至極真面目な話題から、アリョーシャむっつり説やそれ以上にアレだったドストさんと新妻の手紙の内容といった笑える内容まで、読みの可能性がてんこ盛り。「虫けらにすら―好色を!」匂い、特に悪臭というモチーフが全編を通じて使われており、それは反復を繰り返し一つの主題と化しているという指摘は興味深かった。こいつぁラマーゾフ万歳って言わずにいられませんや、へ、へ、へ!2016/06/09
aika
43
江川先生の推論のすべてが、本当に意図されたことだとしたら。大文豪の人智を超えた神業と、それを探求する果てなき大研究に驚嘆です。膨大なロシア語の語源や民話、神話、外国の説話を根拠とし、とめどない江川先生の謎ときを追うのに必死でしたが、最高に面白い!まさか私の大好きなラストシーンが最期の晩餐をなぞらえていて、実現しなかった第二の小説の重要で哀しい暗示がなされていたとはショックです。江川さんが中学生のときに初めて読んで、桜んぼのジャムの場面が一番印象に残ったとの回想は微笑ましくて、私も一緒だと嬉しくなりました。2020/02/19
Vakira
42
カラマから抜出せず、立読みしてたら面白くなってしまい購入。江川さんは自らカラマを翻訳し、集英社版で発行されている。現在、古本でamazonでは1万円もの値が付いている。読みたくなったが、高くて残念。自ら翻訳しているだけあって謎解きというより江川さん解釈。かなりディープ。カラマの題名設定根拠の解釈から始まる。これはカラマ好きには堪らない。そうでない人もそれなりに・・・。カラマの親父、兄弟、等主要登場人物の強烈なキャラの逸話は何度読んでも面白い。神は存在するのか?イワンの悪魔は存在したのか?2015/10/04
たつや
26
ひいひい言いながら、なんとか読み終えたカラマーゾフ。これを読めば 復習ができるかなとおもいましたが甘かった。また読みたいと思いましたが、多分、大分先だろうと思う。でも、カラマーゾフ完成後、ドストエフスキーはまだ二十年くらい生きるつもりでいたのに八十日後に亡くなり、カラマーゾフは未完となったというエピソードはジーンと来ました2016/07/02