出版社内容情報
四十年を経ても癒やされぬ不貞の傷跡。家族は素晴らしく、そして恐ろしい。ジュンパ・ラヒリが惚れ込み、英訳して絶賛された衝撃作。
内容説明
老夫婦が夏のヴァカンスから自宅に戻ると、留守宅が何者かに荒らされていた。家具は倒され、あらゆるものが散乱し、猫が姿を消している。困惑する夫が目にしたのは、40年前、夫が家を出たことをなじる妻からの手紙の束。決して癒えることのなかった過去の傷跡が、次第に浮き彫りにされてゆく。家族はどこへ向かうのか―。ジュンパ・ラヒリによって英訳され、「ニューヨーク・タイムズ」2017年“注目の本”に選ばれた話題沸騰のイタリア小説。
著者等紹介
スタルノーネ,ドメニコ[スタルノーネ,ドメニコ] [Starnone,Domenico]
1943年、ナポリ生まれ。作家、脚本家。大学卒業後、ローマの高校で教鞭をとりながら、「イル・マニフェスト」紙の文化面に携わる。1987年、『教壇から』で作家デビュー。教育現場を舞台にした作品を次々に発表し、映画やテレビドラマの脚本家としても活躍。2001年、自伝的小説『ジェミト通り』でストレーガ賞を受賞した。他に20以上の作品がある
関口英子[セキグチエイコ]
埼玉県生まれ。翻訳家。『月を見つけたチャウラピランデッロ短篇集』で第一回須賀敦子翻訳賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
144
子供が小さい時に浮気して帰ってこなくなる夫も、その事に苦しむ母も、その二人のあいだで引き裂かれる子供達も、確かにつらいが、世間ではよくある話。なんとも言えない気持ちにさせられたのは、みなマイナス思考で、毒性が強いなと言うこと。それと、みんな自分が被害者みたいに話しているようで、それがすきになれかった。手元に残ったものに感謝して生きていかなくてはな、と読んで思う。ジュンパラヒリが絶賛し、自ら英訳したらしいが、私はジュンパ・ラヒリ作品になかなか共感できないので、この作品もやはり…なのかな。2020/02/12
fwhd8325
123
家族の物語です。しかし、ほのぼのしていません。激しい物語のようですがその表現は的確ではないと思います。むしろ、残酷さが浮き立つように感じました。そして、この構成、とても面白い小説だと思いました。読み進むごとに受け止める感想が異なっていく変化、小説の面白さはこういうところにもあるんだと、気づかせてくれました。新鮮でした。2021/01/19
藤月はな(灯れ松明の火)
101
『死の棘』、『心中』同様に自分の家庭の不和の積み重ねで一度でも「ブチ壊れてしまえば良いのに…」と思い、それでも続けている人の心を逆撫でするような本。表紙が全てを表していると言っても良い。一度、決定的に壊れてしまった家庭が元鞘になろうとも元通りにはならない。過去に執着し、裏切った伴侶に復讐し続ける母親も、甘ったるい自己犠牲に浸り切って過去を美化する父親も、子供の事なんてこれっぽっちも考えていなかった。事件が起こる前から、この家族はもう、終わっていたのだ。そしてその苦い事実に蓋をして続けるのだろうという事も。2020/05/16
Willie the Wildcat
92
様々な変動要素の中で、家族の関係性の在り方を問いかける。個々に育んだ価値観を基準に、意図的/偶発的変化を評価。計算結果における愛情/打算/妥協の割合や如何に?紆余曲折を踏まえて立ち戻った原点。家族とは言え、100%明け透けにする必要もない。但し、”Bottom”の信頼は欲しいかな。表題は無意識のつながりを意味し、自然、この”Bottom”の1つという感。但し「0%」ではないが「50%」にも到達していない心の繋がりという印象。結局、個々人の期待値と受容度次第。あまり楽しい読後感ではないというのが本音。2020/07/31
キムチ27
89
ラヒリに関してはひとかたなる思い入れのあるもんだから、読みたかった。う~ん、やはりね!内容が湿潤、重み有りつつも読み易い。Tiesの意は靴紐だけでなく、絆、罠の意もある。その通りで 読み手が生きてきた時間の分だけ内省させられる事しきり~イラついたり、共感したり。私自身、未だに家族って何だろうと思うだけに、面白かった。第一は妻から夫への手紙、第二は内省的な夫のモノローグ、第三はシニア世代になった娘から「父母へに投げかける想い」⇒これが凄くって(笑)薄いながらもプロットの巧みさは凄い‥家族の声のみならず2020/02/13