出版社内容情報
サルデーニャの祖母が遺したノートには激しく秘めやかな「帰還兵」との愛の日々が記されていた。注目のイタリア作家による傑作小説。
祖母が遺した手帖には、激しく秘めやかな愛の日々が克明に記されていた――。留守がちだった両親にかわって、いつも傍らにいてくれた優しい祖母。挙式を前にしたわたしは、祖母が遺した一冊の手帖を発見する。そこには、結婚後、保養先で出会った「帰還兵」との秘めやかな愛の日々が記されていた。父はいったい誰の子なのか――。注目のイタリア人女性作家による官能とユーモアを湛えた魅力的な物語。
内容説明
1950年秋。サルデーニャ島から初めて本土に渡った祖母は、「石の痛み」にみちびかれて「帰還兵」と出会い、恋に落ちる。いっぽう、互いにベッドの反対側で決して触れずに眠りながらも、夫である祖父には売春宿のサービスを執り行う。狂気ともみまごう人生の奇異。孫娘に祖母が語った禁断の愛の物語。遺された手帖と一通の手紙が、語られなかった真実をあきらかにする。ストイックさとエロティックさが入り混じった不可解な愛のゆくえと、ひとにとっての「書く」という行為の気高さをゆったりとした語り口で描きだす奥行きの深い物語。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
128
イタリアで生きた祖母と祖母、そして 温泉治療地での帰還兵との哀切な愛の物語である。 ある意味 屈折した 祖母と祖父の愛の交歓が艶かしく、不可思議な物語に彩りを添える。 原作は 「石の痛み」らしいが、祖母の人生の 愛の痛みを描いたこの作品…哀しく、清冽な 空想豊かな お話だった。2020/11/28
nuit@積読消化中
122
サルデーニャの美しい祖母の愛の物語。ラストの衝撃よりも(衝撃というほどでもないかな…)、もう一人の母方の祖母の話も捨てがたいほど魅力的。また、個人的に心惹かれたのは祖父の愛情かも。これは、物語の物語…。そして、映画『愛を綴る女』を観ねば!これは余談になりますが、“サービス”の内容、とても勉強になりました(笑)。2017/11/06
新地学@児童書病発動中
108
傑作。不幸な結婚をした祖母の思い出を孫が愛情をこめて語っていく。祖母は療養地で、心から愛せる男性に出会い、短い恋の思い出を大切に生きていくのだが……。第二次世界大戦前後のイタリア社会の実情もさりげなく織り込まれており、私のような歴史好きには興味深い内容だった。南部と北部の格差も書き込まれている。祖母の一世一代の恋は切なく情熱的で美しい。何と言っても、この小説は結末が強烈だ。確かに拍子抜けの面もある。しかし、祖母の生き方は読者に強烈な印象を残すのは間違いない。語ることはいつでも女性の領域だ。2018/09/01
NAO
63
激しい愛を求め妄想にまでなる、狂気を感じさせるほど祖母の愛を求める気持ちは強かった。彼女の結石は、その思いが凝り固まったものだったのかもしれない。そして、温泉療養地で彼女は自分の想像にぴったりと合う人物を見つけた。あとになって過去の自分の言動を反省しているから、彼女も現実とはどんなものかを徐々にわかっていったのだろうし、内心では自分を癒してくれる夫が好きだったのだろう。それでも燃えるような恋がしたいそんな相手と出会いたいという思いはどうしようもなかった祖母を支え続けた夫のやさしさに、胸が打たれる。2023/01/18
yn1951jp
56
「愛を取り逃がしてしまう狂気」に取りつかれた祖母の愛が美しい。「狂っている、売春婦になりたいんだろ、この子にはそれしかできん。」といわれ精神病院に隔離されそうになった祖母。自堕落な未婚の母として家族から排斥され逃避したもうひとりの祖母。「わたしはあなたの淫売よ」あらゆる性愛の技巧を尽くしながら、「一番身近な人のことでさえ、わたしたちは何がほんとうにわかっているのだろう。」体内の『石の痛み』は「一番大切なもの」を呼び寄せられない苦しみ。「二つに分かれている」祖母の人生。「帰還兵」に出会い、愛を知る前と後だ。2015/04/05
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