内容説明
ある土曜日の朝4時。ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。テロか?まさか?弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちていた―。名匠が優美かつ鮮やかに切り取るロンドンの一日、「あの日」を越えて生きるすべての人に贈る、静かなる手紙。ブッカー賞候補作、ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。
著者等紹介
マキューアン,イアン[マキューアン,イアン][McEwan,Ian]
1948年、イギリス・ハンプシャー生まれ。シンガポール、北アフリカのトリポリなどで少年時代を過ごす。サセックス大学を卒業後、イースト・アングリア大学創作科で修士号を取得。76年、第一短篇集でサマセット・モーム賞を受賞、その後『時間のなかの子供』『黒い犬』など話題作を相次いで発表し、97年刊行の『愛の続き』がブッカー賞最終候補に。翌年『アムステルダム』で同賞を受賞。01年刊行の『贖罪』は全米批評家協会賞など各賞を受賞するとともに世界的ベストセラーとなり、マキューアンは名実ともに現代英文学を代表する作家のひとりとなった。オックスフォード在住。『土曜日』で、ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
155
安らかな日曜日へと 至るはずの 土曜日の ロンドンでの 物語である。 9.11以降の ロンドンの漠然とした 不穏な 風景が 脳神経外科医ヘンリーを通して、 描かれる。 だが 正直 ぼんやりとした 不安定さは 感じるものの、物語の展開には 入り込めなかった…著者は 何を描こうとしたのか? 共感できるものも 感じ取れない、そんな印象だった。2019/09/29
優希
84
土曜日に『土曜日』を読む、これは偶然でなく必然でしょう。充足な生活の中に堕ちた一雫のざわめく心。何が起きても不思議ではない不穏な空気は9.11の壊された日常を思い出させます。脆い幸せと脅威の足音が聴こえるような1日を丁寧に描いている作品でした。平和な日常は当たり前のことではないことを美しくも残酷に浮き彫りにしています。永遠の安息は存在しないという「不安」を謳い上げることで日曜を迎えようとする想いへと繋げていく綺麗さを感じずにはいられませんでした。当たり前は当たり前でないということを見たような気がします。2015/12/05
どんぐり
82
9.11以降、この世界は不穏な空気に覆われている。無差別テロ、世界的な気候変動、飢えと貧困、難民問題、米ロの対立、シリア・アレッポの空爆など挙げればきりがない。マキューアンのこの小説は、この不安に満ちた時代を生きる人間を描いている。土曜の未明、ロンドン上空に炎を見せながら降下していく機影に「クラッシュ」の連想を抱く脳神経外科医ヘンリー・ペロウン。人気のない冷え切った広場、キッチンにいるミュージシャンの息子、ベッドの中で眠っている妻、娘がパリからやってくる日。イラク侵攻の抗議デモに湧き立つ通り、交通事故でヘ2016/12/20
やいっち
79
イギリスのある優れた脳神経外科医の2003年2月15日 土曜日一日の物語。2001年9月11日の同時多発テロの余韻が熱い頃。アメリカのペンタゴンやCIAなどに奇妙なタカ派シフトが誕生していた。アルカイダをラディンをイランをフセインを倒さないとならないという、狂おしい熱の高まり。今日では、多発テロが先かアメリカの狂気の発作が先かの解明は歴史家の仕事に委ねられてしまっている。だが、2021/05/21
ソングライン
21
脳神経外科医としてのキャリアを積み上げ、昨日も困難な手術を成功に導いた充実感の中で、主人公の土曜日の朝が始まります。目覚めた部屋の窓から見た炎上する飛行機、朝の移動中の接触事故、幸せの頂点にいる主人公一家に忍び寄る不安の影。成功、驕り、尊大への反発としての復讐、現代のテロ行為という負の連鎖を想像させる主人公の濃密な土曜日の出来事。最後の主人公の行動に、ホッとし本を閉じました。2019/02/07
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