内容説明
いつまでたってもモンスーンがやってこない暑い夏に、最初の雷雨とともに生まれた赤ん坊。長じて郵便局員になった彼は、仕事もいやだし生活もうんざり…。舞台はインド。人の手紙を開封しては、見知らぬ土地に夢を馳せる毎日。なぜだか郵便局長の娘の結婚式で尻丸出しで踊ってクビ。あげく突然グアヴァの樹に登る。なんの因果か聖者様と崇められて、とりまく信者に珍妙なる警句、これまたなぜだか起こる家族スパイ警察軍隊猿まで巻き込む大騒ぎの顛末は…?饒舌な語り。繊細な観察力。奔放な想像力。マサラな香りを漂わせる異色の文学の収穫。98年度ベティー・トラスク賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
131
インドを舞台にした破天荒な物語である。 突然 樹の上で 暮らし始めた男サンパト・チャウラ …樹の下で うろたえる家族たちを よそに 平然と過ごす 風が 面白い。 ばかげた設定の下、展開される物語… 読みやすいが、何を考えているのか よく わからない…ある意味 インド的なのだろうか? 全体が 騒がしく、ばかげている、そんな印象が強い お話だった。 2019/06/29
mico
3
あるインド人一家とその周りの面々が繰り広げるドタバタに時折クスッと笑って楽しむ本ですね。 このかわいい表紙のようににぎやかなお話です。 ただ、アレックス・ガーランドの『ビーチ』が受賞したベティー・トラスク賞を次の年に受賞している作品ということで読む前の期待が大きすぎたかも。 ラストに巧妙な大仕掛けがあるのだろうと読み進みましたが、拍子抜けだったのが残念。2012/07/21
POCOT
3
自由に静かになりたくて木の上で暮らすようになった主人公のまわりで、とにかく大騒ぎ!という話。ドタバタ喜劇なんだけど、家族、宗教、自然、料理とインドの人々の生活が描かれていて、大騒ぎなのにほのぼのしているというか一味違う、不思議な魅力をもった作品。表紙の絵がカラフルで想像力がふくらみ、読んでいてとても楽しかった!2009/05/29
みみずばれ
2
舞台はインド。うすのろな青年は日々の仕事や生活に嫌気がさし、家を飛び出しグアヴァの樹上に住みつく。静かで思索的な日々を得たと思ったのもつかの間、なぜか聖者に祭り上げられ信者が樹下に集まりだし、一儲けを企む父や料理狂の母、はては猿や軍隊まで巻き込んだドタバタ劇が繰り広げられる。インド系女性米国作家といえばラヒリが有名だが、日本人がインドに求めるのはラヒリの都会的で洗練された雰囲気より本書のような混沌としたエネルギーではないか。ナンセンスなようで一人の隠者と宗教の誕生、宗派の分裂等を戯画的に描いていると思う。2014/06/18
マサ
2
面白い。このスラップスティックな感じ、特に終盤のスピード感がたまらない。読んでいるうちに、登場人物の全てのキャラクターが自分に当てはまるような気がしてくる。2013/11/09