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内容説明
タイタニック号の楽団員の生涯。沈没が始まっても演奏を続けていた伝説的な彼らは、その瞬間まで、何に悩み何を喜びにしていたのか。史実と想像力が渾然一体となった希有な長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
187
タイタニック号の楽団員たちの人生を 描いた作品である。その瞬間に向けて、そして その瞬間に 彼らは どう生きたのか… 19世紀末から第一次世界大戦前夜にかけて、 ヨーロッパを生きた男たち… 個々の人生を 著者は 丹念に描く。 引き寄せられるように、タイタニックに 集まった楽団員たち…才能を持ちながら、開花させることができなかった者たちへの鎮魂歌の ような、作品だった。2019/06/02
優希
93
映画タイタニックで、船が沈没する中でも演奏を続ける楽団員の場面が印象に残っています。この物語はタイタニックに惹き寄せられるように乗り込んだ楽団員の物語でした。沈む船に乗り行く楽団員たちそれぞれに人生のドラマがあり、そのドラマを一人一人丁寧に描いていて面白かったです。何を思い、船に乗り込むのかを見ていると、それが旅なんだなと思わずにはいられませんでした。沈没が始まるその瞬間まで何を悩んで喜びにしていたのか。タイタニックの最期に奏でた音楽が彼らの解放そのものなのかもしれません。2016/01/14
めしいらず
70
転落の運命に引き寄せられるようにタイタニック号で集い、共に海の藻屑と消えた楽士たちの物語。彼ら一人一人の人生が十分に描き込まれ、複数の長編小説を読んだかのような読後感。彼らは様々な理由から十分に親の愛に恵まれず、思い描いた夢は儚く破れ、心に深い傷を負った者たち。沈み行く船上で、自分たちへのはなむけとして人生の最期に奏でたヘンデルのラルゴ。その哀しく美しい響きの中、それぞれに去来したもの。それを思うと胸が苦しくなる。敢えてタイタニック号の断末魔を省略し、船が消えた海と星空の静寂を映した幕引きが見事。2013/07/27
兎乃
33
Psalm at Journey's End 英語版の装丁はブルーの水にヴァイオリンが沈んでいく、いや沈んでいくというより そのヴァイオリンはニルヴァーナの2thアルバム「ネヴァーマインド」に写る赤ちゃんのように意思を持って水の中に在る。タイタニック号、沈没が始まっても最後まで演奏を続けた楽団員、彼らがどんな人生を送り、どのようにしてこの船に乗り込んだのか、ノルウェーの作家ハンセンはわずか25歳でこの史実と想像力が渾然一体となった物語を書き上げ、26カ国語での翻訳刊行のベストセラーとなった。→ 2013/03/23
(C17H26O4)
29
楽団員ひとりひとりの才能ゆえの孤独に胸を締めつけられるようでした。かなりのページを使って書かれている彼らの生い立ちや成長や恋や挫折は、これから起こるタイタニック号の沈没を知っているからなおさら悲しく美しく感じられました。「船がひとつの星になり、夜空の何万という星のあいだを走っていく」「星はさまざまな夢を運んでいる」沈没の約24時間前、ダヴィットがスポットと甲板で見た光景。人生を諦め傷ついている彼らは、故郷から過去から遥か遠い海上にいる我が身をどんな思いで見つめたのか。淋しさで胸が苦しくなりました。→2018/02/03