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内容説明
野生動物だけが生息するシベリア針葉樹林帯で、30年以上自給自足していた家族が発見される。老人の率いられたその家族は、信仰を守るため、約300年前にこの地へと逃れてきた一族の末裔だった。家族以外の他人に一度も会ったことのない純真無垢な末娘、アガーフィアの、驚くべき忍耐力と溢れるばかりの好奇心…。ロシア全土が固唾を呑んで見守ったルイコフ一家の運命。その「事件」の全貌。
目次
ニコライ・ユスチーノヴィチの話
はるかな森へ
出会い
ろうそくを囲んで
森と畑
火
ルイコフ一家
日々の暮らし
一年後
再び、夏
山羊の年
アガーフィアの大冒険〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鷺@みんさー
27
興味深かった。ピョートル大帝時代の宗教紛争によって、世間から隠れ済むようになった隠者の一派。やがて、その中でも思想の違いでどんどん枝分れしてゆき、ある日…1978年に、シベリアの深いタイガの中で、偶然に「発見」された。そこには一家5人が徒手空拳の中、苛烈なサバイバル生活を送っていたのである。資源探査エンジニア隊との接触を機に、彼らは「俗世との関わりは罪である」と昔のままの暮らしを頑なに続けながらも、現代人と触れることで人の優しさや暖かさも知っていく。徐々に「支援物資」を受け入れながら、揺れる姿に魅了された2023/03/01
澄
12
信仰のため俗世から離れ森のなかで暮らす家族の物語。現代社会、都会で暮らす者には耐え難い環境での暮らしの様子が描かれているが、これらも信仰がなせるワザなのかと思いつつも読み進めるなかで信仰だけではなく、その環境に慣れてしまっており、変化が出来ないという面も感じられる。また俗世から離れてはいるもののやはり人間は一人では生きていけない、何かしらどこかで他人の力に頼らざる負えないものであると感じた。環境は違えど彼らの生活、生き方から学ぶものは多い。2017/04/30
Quijimna
11
1978年、山深きシベリヤのタイガで偶然発見された小屋とボロを纏った一家族。30年ものあいだ外界と接触を絶った「ロシア正教分離派」の彼らは、獣しかいない極寒の地で、どうやって生きてきたのか。 次々と斃れる一族の中で最後まで生き残ったひとりの女性、それがアガーフィア。父の遺訓を墨守しつつも、初めて触れる文明に強烈な好奇心を示す彼女の無垢なる魂が、本書のテーマ。 『旅行人』蔵前編集長のタイムラインでこの「事件」を知り、早速読んだ。 (コメントに続く)2016/09/06
ブリキマン
5
地元の催事の古本で見つけた。人生の大半を家族だけで辺境の地に隠れて暮らしていたが、特に末娘がひとりになってからは次第にメディアなどを通して「世俗」との繋がりがふえていく。依存の度合いが増し、それと引き換えのようにメディアに情報が流される。宗教に殉じて世俗を拒む為に、世俗と両依存的な関係も深めざるを得ないという皮肉な話し。2012年のロシアのTV映像がユーチューブにあった。2014/11/22
印度 洋一郎
4
1978年、シベリア奥地で発見された隠者の一家を取材した、ソ連の新聞プラウダの記者がその記録をまとめたもの。このルイコフ一家は、元々ピョートル大帝の時代にキリスト教の教義の違いで各地に隠遁した「分離派」と呼ばれる人達。一家は、その分離派のコミュニティからも別れ、第二次大戦末期に国家に反抗的な「裏切り者」狩りを逃れて、山中に身を潜めた。以後、ルイコフ家は家族だけで完全自給生活を三十年以上続けていた。この驚きの発見は、ソ連市民に衝撃を与え、近隣の森林関係者や報道関係者が交流するようになる。2022/04/30