出版社内容情報
救いとなる幻影を求めて――オースターの魅力のすべてが詰め込まれた最高傑作長編!
妻と息子を飛行機事故で失うという人生の危機の中で、生きる気力を引き起こさせてくれた映画の一場面。主人公はその監督ヘクターについて調べてゆくことで、正気を取り戻す。ヘクターはサイレント時代末期に失踪し、死んだと思われていた。しかしある女性から実は生きていると知らされる……。意表をつくストーリー、壮絶で感動的な長編。
内容説明
絶望の危機から救ってくれた、ある映画の一場面、主人公はその監督の消息を追う旅に出る―大胆で意表を突くストーリー、壮絶で感動的。アメリカでもオースターの最高傑作と絶賛された長編。
著者等紹介
オースター,ポール[オースター,ポール][Auster,Paul]
1947年、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。コロンビア大学を卒業後、石油タンカー乗組員、山荘管理人などの職を転々としながら翻訳、詩作に携わる。82年、初めての散文作品『孤独の発明』を書いたのち、85年から86年にかけて刊行された「ニューヨーク三部作」で小説家となる。以後着々と秀作を発表し、フランス、ドイツ、日本などでは本国アメリカ以上に評価の高い世界的人気作家として活躍している
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京生まれ。東京大学文学部教授。専攻、現代アメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
360
喪失に次ぐ喪失の物語。少なくても本書には4つの大きな喪失が語られている。もっとも、物語の最後にはわずかに希望が語られてはいるのだが。また、この物語の中では少なくても3通りの時間が流れており、その構造はきわめて重層的だ。すなわち、物語が語られている現在時、物語の語り手である「私」とアルマが共有した時間、アルマによる「ヘクター伝」の中に流れる時間―これらの3つがそれにあたるが、これ以外にも物語以前に「私」が抱えていた過去の時間がしばしば揺曳するし、あるいは映画の中の時間もそこに加えられるかもしれない。2012/12/27
キムチ
64
読書は脳で読む→心で感じつつというが、視覚というのがこうも大きな影響をもたらすかと、ポール作品に触れつつ嘆息。子育て期、「ルルオンザブリッジ」「スモーク」に感銘し、それは俳優女優の演技力としか思っていなかった。私みたいな単細胞は本から入っていく方が深く感銘できそうだ。この書を読み、ポールがシネマの世界にどれほど堪能かよく分かる。作品中に作品を入れ込む手法は「ガラスの街」でお馴染み。今回はそこが洗練され、読み手を幻影というあやかしで酔わせている。H.スペリングの手になる「M.フロストの内なる生」視たいものだ2017/06/01
内島菫
43
とてもよくできた話である以上、現実と違いきれいに作られた部分があり、確かにそこに違和感を覚えるものの、書いてある通りにしか思えない細部や流れもある。結局、そもそも小説にしろ現実にしろ、虚実が入り混じった形で存在しているのだろうとまた気づかされる。これまで読んだオースター作品を振り返ってみると(ぼんやりとした記憶なのだが)、消えていくもの/消えたものに対する独特の執着心を様々に見せられてきたように思える。2017/06/28
さっとる◎
40
大きすぎる悲しみは大きすぎる喪失とともに。深く自己の内に沈む横を時間だけ通り過ぎ人は顔無し記憶は白く。自らの悲しみに沈みこみすぎた彼が沈んでいった他の生にも大きな悲しみと喪失がある。ただ息する肉体で精神は麻痺し苦しみを苦しみと捉えることすらできず。人は固有の物語を生き、それは固有の物語を有する他人なしでは語り得ない。映像と文字が映し出すたくさんの彼の彼女の物語。彼はあなたで、私。多くを失ってまだ生きている。悲しみの中にいても波は襲いかかるし狂気が育まれるそこでしかし希望も愛も潰えない。まだ生きているから。2018/12/17
syota
33
いくつもの時間軸が共存し、結末に向けて次第に収斂していく。作者の出世作であるニューヨーク三部作に比べ、時間・空間両面で遥かに大規模かつ複雑な構成になっている。ともに死の影を背負った元映画スターと大学教授、両者を結びつける謎の女、そして従順な脇役と思わせながら最後の破局を主導するあの存在。サスペンスにロマンスを交え、長丁場を弛みなく一気に語り切るストーリーテリングの巧みさが光る。何もかもが失われゆく中で最後に一筋の光明を見出す結末も、物語の後味を良くしている。2019/04/01




